赤髪海賊団の船・レッドフォース号に住み着いた野良猫は、それなりに懐いているが、意思表示もはっきりとしている。嫌なことをすれば猫パンチをお見舞いするし、機嫌が良ければ頭を摺り寄せる。つまりは猫らしい猫なのだが、普段は酒臭いと近付きもしないシャンクスのもとへと訪れて、ぐるぐると喉を鳴らしながらふみふみを始めれば、今日はどうしたと尋ねたくもなるわけで。
「お、どうした……珍しいな」
「本当に珍しいな……」
しかし、今はそれなりに大事な幹部会の真っ最中。次の航路を決めるために海図を壁に広げたスネイクも一旦話を止めると、椅子に腰かけるシャンクスの上で腹あたりをふみふみしている猫を見下ろした。肉球を押し付けるたびにぱっと開く手のひら。確か、ふみふみの理由にはストレスもあったが、ごろごろぐるぐると喉を鳴らしているあたり、その線は薄そうだ。
「お前が甘えてくるなんて、明日は雨かもしれないぞ。スネイク」
「今日の天候を見るに明日も晴天だと思うが……あぁ、いや、お頭。雨じゃなく槍が降るかもしれないな」
「はは、そりゃあいい!そうなったら武器を買わずに済むってもんだ」
「……ほかの奴らは船が壊れるとぶちぎれそうなもんだが」
「そうなったら覇気で吹き飛ばすさ」
「おい、それは耐えるおれたちの身にもなってくれ」
スネイクの言葉にシャンクスは笑う。それから未だふみふみを続ける彼女の頭に手を置いて、猫の額をむいーと親指で伸ばすように撫でたが、彼女が手を止めることはなくふみふみは続く。そうして気が済むまでふみふみして満足したらしい猫は、その場でぐるぐると回って寝心地の良いポジションを探すと、身を伏せてシャンクスの膝の上に顎を乗せて眠り始めた。
なんて猫らしい猫だ。懸賞金四十億越えの、それも四皇の膝枕を受ける者なんて、いまや彼女ぐらいだろう。それがなんだかおかしくて、シャンクスは笑いながら舌をしまい忘れた猫の舌先を触り、ついでにピローと伸ばしたが、彼女は熟睡中。猫はそのまま目覚めることもなく、ゆっくりと舌を引っ込めては、再度シャンクスに引っ張られと繰り返し、スネイクは呆れたように「なぁ、話を続けていいか?」と問いかけた。