ケモになりまして

黒岩

「触るな」静かな声が伸ばした手を払う。しかしながら足を組んで座る彼の頭には耳がある。黒い艶のある耳は少し大振りで、払われてもなお触ろうとすると冷めた目が此方を向いて長い尻尾が手首に絡んだ。「その耳はお飾りなようだな」

綾部

サビトラ柄の耳と、先が曲がった鍵尻尾。やさぐれた彼にお似合いな柄の尻尾はてふてふと揺れて、それを掴むと綾部は「掴むなよ」と面倒臭そうな顔で言うものの、彼が手を払う事はない。それに乗じて、頬に触れて顎をなぞる。「ねぇ、綾部。飼ってあげようか」尋ねると、彼は乾いた笑いを落として「やなこった、俺は飼われる趣味はねえんだ」と皮肉を漏らした。

九十九

「やや……っ、まさかボクが萌えの対象になるとは……」

萌えを抱く側ではなく、抱かれる側になるとは気恥ずかしいですなぁ。言葉通り気恥ずかしそうに笑う様子にホッコリとするものの、彼からすればヘッドフォンが使えない状況がもどかしいらしい。「この耳では折角買い替えたばかりのヘッドフォンが使えません。いけませんねぇ……こういった耳はボクではなく××さんのような、可愛らしい人につけないと」独り言ちるように呟く言葉。それから驚き言葉を失う××に気付いた九十九は「ヒヒ」と笑い、「ボクは、萌えを抱く側ですからな」と続けるように言った。

渡辺

「この姿が可愛いだぁ?おっさん相手によくそんなことが言えるな」

呆れたような物言いと眼差し。しかし、恰幅の良いおじさんに犬耳と尻尾が生えているのだ。こればかりはこちらの反応が普通である筈。だから、「ナベさんが可愛いことになってるからでしょ」と言って頭を撫で、耳をフニフニと摘まんでいると普段よりも血色の良い顔が「だああ、もうやめろ!あんまりにもしつこいと、しょっぴくからな」と鬱陶し気に手を払った。

海藤

「なんだ、随分と面白い事になってんじゃねえか」

一体なにがどうしてこうなった?自分の耳を触る海藤は面白がって言ったあと、「こういうのは、××ちゃんみたいな可愛い女がつけるべきだろうにな」と笑う。あんまりにも真っ直ぐ言うものだから、なんだかお腹がこそばゆくなって誤魔化すようにピンと立つ犬耳を触り、そのまま短く切り揃えた髪を撫でると「おお?なんだ、犬耳も悪かねえな」と機嫌よく笑い、尻尾を揺らした。