働く貴女を尊敬しています!

ガイ×画家
「すっげぇ……これ、本当に譲ってくれるのか?」
ホテルZに飾る絵がないのなら──。寄贈の約束をして早一カ月。完成した絵を見るガイの瞳は窓から差し込む光に反射して、キラキラと輝いていた。その視線の先にはミアレシティを描いた風景画が一枚。シダーウッドの額縁にあるその風景画は鮮やかで、不思議と人を惹きつけるような魅力がある。
「寧ろこれでいいの?ZAさんからの要望は全て入れたつもりだけど……」
別に手を抜いたわけではない。ただ、何枚依頼されたところで自分が描いているものを堂々と提出出来るほどの自己肯定感は持ち合わせていない。××が訊ねると、ガイは首を振り強く語った。
「何言ってるんだよ、コレがいいんだって!……オレは別に美術や芸術に詳しいわけじゃないけど、でも、きっとお客さんは足を止めて見てくれるはずだぜ。何よりホテルの雰囲気が良くなるに決まってる」自分が抱いた感動や感情の全てを、言語化して説明する事が出来ない。ガイはそれに酷い焦燥感に似た感情を抱いたが、それでも今ある感情を“話せない”の一言で片づける事は出来なかった。「……上手く言えないんだけどさ、オマエの目にはこのミアレシティがこういう風に映ってるんだな。……やっぱりオレ、このミアレシティで人助けをしたいって思ったよ」きっと、これはお世辞なんかじゃない。彼の青い瞳は真っ直ぐに画を見ており、まるで太陽でもみたかのように──眩しそうに目を細めていた。

カラスバ×花屋
「おはようさん、急で申し訳あらへんけど、花をいくつか包んでくれしまへんか」
挨拶もそこそこにオーダーしたのは二つの花束であった。一つは彼──カラスバのコーディネイトにも調和する色合いの花束で、もう一つは細かく花の指定を受けた花束。初めの花束に関しては色合いの指示もあり満足するものが出来たと思うが──もう一つはどれも恋愛よりの花言葉を持ったものばかりだ。
恋の始まり、純粋な愛情、あなただけを見つめている──それは誰かに向けたに思えて。「あ、の」と顔を上げるとそれを見透かしたように目を合わせた彼は、少しだけ悪戯に笑って「どや、結構ロマンチックなことするやろ」そう言って、完成した先の花束だけを受け取った。「うん……やっぱりオマエの作る花束が一番ええな」花束を眺め、穏やかに呟くカラスバ。その瞳はいつになく穏やかで、表情が柔らかいような──手慣れた様子で支払いを終えると「ほな、また来るわ。この後の仕事もおきばりやす」といって踵を返し、手元には愛のこもった花束だけが残った。

ジプソ×エンジニア
「頑丈に作られたヘビーボールがこうなるなんて……一体どんな使い方をしたんですか」「面目ない……」
モンスターボール専門の修理屋に来店したジプスは、気落ちしていた。依頼したのはハガネール入りのヘビーボール。しかし表面には深い傷が入っており、亀裂が開閉ボタンの上を横断している。それによりボタンを押しても反応無し。それどころか僅かな電流がバチッと弾けてゴム手袋をしながら事情を尋ねると、先の戦闘による不慮の事故だと零した。
「……ジプソさんはそう乱暴な扱い方をしないでしょうが、修理を行う上で暴発した電気は中のポケモンに影響を与える事もあります。本当に気をつけてくださいね」
幸いな事に取り出しに必要な部品と、内部に表面のカバーを外した先にある緊急用の取り出しボタンは無事であった。それを使いハガネールを出してやりフウと息を吐き出すと、珍しく表情を明るくしたジプソがハガネールにそっと手を添えるよう身体を撫でる。それから続く言葉は「素晴らしい……やはり貴女の技術は随一ですね。貴女に頼んで良かった」「ぜひ今後ともサビ組に協力をして頂けませんか」と誉めを混じいたビジネス営業だったのだが──「それと、ぜひお礼をさせてください。どうでしょう、このあとワタクシと食事というのは」その言葉はどうにも営業らしくなく、いつもは冷たい鋼のような瞳が、熱を宿していた。