メリークリスマス!

難波
クリスマス会をやるといったのに、なかなか姿を見せない夢主。約束の時間を一時間過ぎた事には恋人とデートでもしているんじゃないかと嫌な話題で盛り上がっており、足立さんに至っては酒も入り、「次に会う時は結婚式の招待状を渡されたりしてなぁ!」と赤い顔で笑っている。……冗談じゃねえ。
「ええ、でも彼氏の話なんて一度もでなかったわよ?」「いやぁ、もしかしたら直前に出来たのかもしれないぜ。なんといったって今日はクリスマスだからな!」なぁナンバ!と言われても、上手く笑えずに乾いた笑いばかりが落ちる。それに足立さんは不思議そうな顔で、「なにをしけたツラをしてんだ」と腕を絡めるが──「ごめんなさい、遅れちゃった……!」と彼女が白い息を吐きながら到着すると、俺は無意識に立ち上がっていた。「お、おう……遅かったな!」「クリスマスなのに残業になっちゃって……待たせちゃいました?」息が上がっている彼女の鼻先が赤い。それにどこか安堵が零れると、俺は頭からずり落ちたサンタ帽子を彼女の頭にやり「……メリークリスマス、待ってたんだぜ」と呟いた。

春日
「自分で言うのもなんだけどよ、デートじゃなくてクリスマスパーティーでよかったのか?」
まさか、クリスマスデートではなくサバイバーでのクリスマスパーティーに参加することになろうとは。サンタにトナカイと、各々クリスマスをテーマにした恰好で楽しむ様子はなんとも賑やかで、なんとなく見ているだけで楽しくて仕方がない。その一方で彼はデートではない事に不満を抱いている。──というよりも、不安を抱いていた。
女の子っていうのはクリスマスデートが安牌なはずじゃ……そう思うのは、事前に難波や足立に相談していたからで、今日のために色々と考えていた。なのに彼女が選んだのはデートではなくて、サバイバーでのクリスマスパーティーで。そりゃあクリスマスパーティーだって楽しいが、付き合って初めてのクリスマスだ。ひょっとして、自分が甲斐性無しだから遠慮したのでは。そんな卑屈な考えは頭の中でめぐりに巡り。腹の中が妙に重たくなって、不安が走る。しかし、それを奥底に留める事もできず勇気を振り絞って尋ねると、彼女は不思議そうにしたあとクスクスと笑った。
「だって、一番くんは刑務所を出てはじめてのクリスマスでしょ?みんなで楽しんだ方がいいんじゃないかって」暖かくて、誰よりも自分の事を考えてくれたその言葉。それに胸を打たれて「××ちゃん……好きだ……」とこぼれたのは間違いなく本音で。「へ、え?」××が顔を赤くする姿に春日もまた顔を赤くして、「いや、これはその!冗談……いや、冗談じゃねえんだけどよ!」と慌てふためいた。

マスター
「これはおれからの奢りだ」
クリスマスにお呼ばれをしてサバイバーに入ると、そこで小さなタルトケーキを出された。ミニタルトの上に赤や黄色の果物があって、その上にはクリスマスツリーをイメージした薄緑のホイップクリームがクルリクルリと巻くようにして絞られている。一番上には砂糖菓子の一等星。その可愛さに驚きながら携帯を向けて数枚撮ると「これ、どこで買ったんですか?」と尋ねた。「うん?ああ、いや、そいつは俺の手作りだ」「え、マスターの手作り?!」「おお、だからそいつは数量限定品でな、それが最後の一つだ」「はー……大事に食べなきゃ」後ろの方から「××ちゃん、それ美味しかったぜ!」「マスターは菓子作りまで出来るとはなぁ」「こりゃあバレンタインが楽しみだ」──と笑う一番たちの声が飛ぶ。それにクスクスと笑って「だってよ、マスター」というと、彼はなんともむずがゆそうな顔で息を落とし「さっさと食っちまえ」と普段よりも素っ気なく零した。