弟はおれのことを要領が悪いと言っていた。しかしそう思うのは彼だけではないようで、幼馴染もおれのことを要領が悪いと言っていたが、彼女の眼差しはいつだって暖かかった。
「アンタは弟と比べて要領悪いわよね。……でも、そういうところがアンタの良いところなんだと思う」
数本の花を選んで、紙で包む。根本のリボンの色や装飾を聞かれて「お前がやりやすいようにやってくれ」と返すと「そういうところは要領良いの?」と笑われてしまったが、不快に感じるよりも先に腹がこそばゆくなるのは何故だろう。その想いに気付いたのは悔しくも彼女が事件に巻き込まれて負傷したあとのことで、痛みに呻く彼女を見て手を差し伸べると、××は手を払って拒絶を示した。
「……ッい、い……早く、他を、助けに」
「馬鹿言うな!お前を助けてから他にいく!」
ゼロゼロと響く喘鳴と、痛みに涙を零す××。無理に腕を掴んでその身体を背負うと、海賊により刺された彼女は呻いて、海賊がほかの女子供を連れていってしまったのだと零す声色が普段よりも弱弱しい。
そのとき、何故か分からないけれど二人で迷子になってしまった時のことを思い出した。あの時はなんとか二人で街まで帰ることが出来たが、あんまりにも彼女が弱弱しい声で自分を責めていたから、おれが守らないといけないと…そう思ったんだっけ。
「……ハハ」
「……何…?」
「いいや、なんでも。……兎に角おれはお前も助けるし、他も助ける。そのためにおれは海兵になったんだ」
だから要領悪く助けられてくれ。その言葉は自傷か誇りか。兄は彼女を背負ったまま口端を吊り上げると、ゆっくりと走り出した。