幼馴染の私たち

 それは、柄の間の休息であった。

「ああー……あったかぁい……」

 任務へ向かう道中で見つけた、小さな足湯の場。任務のことを考えるとあまり休んでいる暇は無いが、どうせこれから暫くは忙しくなるのだ。であれば五分、十分ほどの休憩位は許されてもいい筈だ。

 そうカクに主張して、なんとかもぎ取った十五分間の休憩。辺り一帯に人が居ないことを良い事に、ニーハイソックスをするすると脱いで、ついでにブーツも脱いで近くに置くと、足湯を囲む岩に座って足を入れる。ちゃぷんと入れたお湯はおよそ四十度ちょっとだろうか。少し熱いような気もするが、拠点を出て歩き疲れていた身体にはたまらなく気持ちが良かった。

「はー…どっこいせ、と。……おお、確かに気持ちがいいのう」

 そこに、遅れて隣にやってきたカクが、裾を膝辺りまで捲ってから素足を浸ける。先ほどまで「此処で休んだとて、先は長いじゃろ」だとか「今ここで休むよりも宿で休んだ方が効率的じゃ」とか何とか言っていたけれど、彼の和らいだ目元を見るにやっぱり選択肢は間違っていないように思える。ふーん、やっぱりね。ついつい私の頬も緩んでしまうが、意地っ張りな彼にそれを悟られたら面倒な事になりそうだ。私はそれを悟られぬよう、話題を探して視線を足湯に向けると、ふと隣にある足を見て呟いた。

「……あれ、……なんかカクの足大きくない?」

 ゆらゆらと揺れるお湯の中。明らかに私の隣にある足が大きい。

 普段足なんてまじまじと見ないこともあり、その大きさの違いに驚いてしまって「そうか?」と尋ねる彼に頷くと、立ち上がって彼の向かいに座って見せた。

「ほら、ぜーんぜん違う」

 片足をお湯から引き揚げると、カクも察したように足を上げて私の足裏に自分の足を重ねる。やはり改めてみると大きさが全く異なっており、目視しても五センチ程度は違うように見える。
 共に育ってきた場所も、それから食べるものだって一緒な筈なのに、どうしてこうも成長度合いが違うのか。どうせ頭でも、それから運動や戦闘能力でも勝てないのだから、身長や足ぐらいでは勝たせてくれたっていいだろうに。

「わはは……本当じゃ。お前の足はちいこいのう」
「ふふ、可愛い足でしょう……」

 まぁ、でも、カクが自分よりも小さいなんて想像つかないか。目の前にいるカクを見ても、彼はやっぱり自分よりも大きくて、なんだか悔しくて、重ねた足をもじょもじょと足の指を折り曲げたり開くことで擽れば、カクは「やめんか!」と一喝して私の可愛い足を、踏んづけた。なんてやつだ。こういう容赦ないところが身長が伸びる秘訣だったりするんだろうか。そんな失礼なことを考えていると、目の前の瞳がじいとこちらを視続けていることに気付いた。

 はて、他愛のない悪戯だったがまだ怒っているのだろうか。であれば茶化して火に油を注ぐのも。そう思い「どうしたの」と尋ねると、彼は少しの間を空けて「……ちと、隣が寂しいのう」と呟いた。

「……」
「……」
「……、……」
「……、……何か言わんか」
「っな、なにぃもう可愛いことを言って~~~!!」

 彼にしては珍しいデレだ。そりゃあこんなことを言われてときめかない女は、多分カリファぐらいしかいないわけで、まんまとハートを射抜かれた私は立ち上がって、ざふざふと湯をかき分けて彼の隣に座ると、ついでにぴったりと身をくっつけた。

「へへ……どう?これで寂しくない?」
「……らしくない事は言うもんじゃないのう」

 珍しい事を言うかと思ったら、自分でもそう思ったらしい。彼は帽子のツバを持つと顔を隠すように下げたが、それでも隠し切れない彼の耳はほんのりと赤く染まっていた。なんだかそれが可愛らしくて「カクって時々可愛いことするよね」と呟くと、彼はまた私の可愛い足を踏んづけて「煩い」と機嫌悪く呟いた。