四皇・赤髪のシャンクスが大頭を務める赤髪海賊団の船に、猫が乗っていることを知る者は少ない。しかし、彼女を知る船員の殆どは、彼女に頭が上がらない。なんせ彼女は古株だ。正確な年齢は分からないが、ウタが流れ着くよりもずっと前からこの船に乗っている。
だから船員たちは彼女に頭が上がらないし、幹部たちもいつの間にか住み着いた猫をそれなりに可愛がっていた。
そんなある日のこと。ヤソップが羽織る外套とお揃いの、星を散らしたスカーフを巻かれた猫は逃げる。自由を謳う海賊が、首輪をするとは何事か。ヤソップはスカーフだなんだと言っていたが、彼女にとっては首輪に等しい代物で、ヤソップの手から逃れた猫は甲板を駆けまわったあと、端の方で一服するベックマンの膝上に飛び乗った。
「……珍しいな、どうした」
ベックマンは、目元を和らげる。それから、猫が鬱陶しそうに首元を掻くのを見て、「これか?」と尋ねながらスカーフを解いてやれば、彼女は満足そうに目を線にして頭を摺り寄せる。
それが彼女なりの礼であることを知っているベックマンは、指に合間に煙草を挟んで息を吐き出すようにして笑み、顎を擽る。ごろごろと続く喉の音は彼女の機嫌を語り、そのまま擽る指先に機嫌をよくした彼女はその場に手をしまうようにして体を伏せるが、後からヤソップとライムジュースが追いかけてくれば話は別だ。
彼女は「んな゛ぁぁ」と低い声で鳴くと、二人を睨む。気に食わないって顔だ。
「レディはスカーフが嫌みたいだぞ」
「いや、でも可愛かっただろ?さっきのスカーフ」
「なぁ、柄が嫌って可能性はないのか?あれヤソップとお揃いだろ」
「おれとのお揃いが嫌ってことかよ!」
というよりも首に巻くもの自体が嫌そうであったが、ちらりと見下ろした猫は語らない。ただ、「なぁもう一回してくれよ、な?」と別のスカーフを手に両手を合わせるヤソップを見てプイと顔を背けると、「ほら、やっぱりヤソップと同じなのが嫌なんだって」と肩を揺らしながら頭を撫でようと手を伸ばすライムジュースの指を噛んだ。