名前を呼んでよ

難波
「いや別にいいけどよ……なんでまたゆうちゃんなんだよ」
突然、「私も紗栄子さんみたいにあだ名で呼んでみたい。ゆうちゃんとか、ゆーちゃんとか」と強請られた。一体なにがどうしてそう思ったのかと聞きたい事はあるが、別に嫌と言うわけではない。ただ、そこで提案されたものが気になって尋ねると、彼女は首を傾げて言った。「難波悠、なら普通はゆうちゃんとかゆーちゃんじゃない?ナンちゃんの方がレアっていうか」その言葉に首を傾げる難波と春日。「難波つったらナンちゃんだろ、ほら昔〇っチャンなんチャンって……」「ああ、懐かしいな。そうそう、その番組有名で大体は苗字にちゃん付けってのが多かったよなぁ」しかし、彼女は首を傾げたまま、そもそも、それすらも知らないというような顔だ。
難波と春日は顔を見合わせる。それから「おい、あの番組って終わったのいつだ?」「げっ、もう二十五年前じゃねえか」と零す彼らは色々とジェネレーションギャップで感情が追い付かず、「ねぇ、それってなに?」と尋ねる彼女に「なんでもねえ……好きにナンちゃんでもなんでも好きに読んでくれ……」と力なく零した。

難波②
「悠ちゃんだぁ?お前よ、俺のこと何歳だと思ってんだ……」
ナンちゃんはいいくせに、悠ちゃんは嫌らしい。しかしその顔は妙に気まずそうに外を向いており、此方に見える耳が妙に赤く見えるのは――きっと気のせいではないだろう。確かに、難色を示している割に、はっきりと口で止めろとは言っていない。「悠ちゃん」「……なんだよ」「ゆーうちゃん」「……うるせえなぁ」ふふふ、どうやら彼はツンデレらしい。


「俺のこともさぁ、名前で呼んでくれたっていいんじゃない?」
ソンヒは兎も角、春日くんのことも一番と呼んでいる。彼女はなぜ一部の者だけを名前呼びするのだろう。尋ねた先で、揺れる瞳を見て、首を傾げる。それから視線が逸れる様子に「それとも、俺だけが駄目だったり?」と尋ねたのは――その赤い顔を見たからで。彼女の両手を優しく掬って、「楽しみだなぁ、いつか君が俺の名前を呼んでくれる日がさ」そう伝える声は、いつもよりも穏やかであった。

一番
「名前?おう、好きなだけ呼んでくれ!」
笑って言ってくれるから「じゃあ、一番……よろしくね」と言ったのに、彼の反応は意外にもウブであった。その瞬間、ピクリと揺れ動き、硬直する春日。その顔はじわじわと熱を集めて赤くなり、彼の長い睫毛は下を向いていた。「……一番なんて他の奴らにも言われてるはずなのに、××ちゃんに言われると……どうにも照れちまうな」……その反応の可愛さといったら!なんて可愛い人なのだろう、真っ直ぐすぎるその反応に「一番、一番、いちばーん」と名前を連呼したのは、ただの意地悪。けれど彼はそれを全て真っ向から受け止めて「××ちゃん、案外いい性格してるな……」と顔を赤くしたまま言うので、色々と悪い扉を開きそうだと胸が弾んだ。