眠れない夜にキスをして

 最後の竜人族だなんだ言われても、どうしようもなくムラムラしてしまう日はあるわけで。

 性欲処理でもすれば少しは収まるのだろうが、今わたしのいるこの場所は壁の薄い宿屋で、さらにはベッドに体を倒す私を後ろから抱きしめるようにカクが腹部にがっしりと腕を回して眠っている。彼の伝わる温もりは非常に心地良いが、どうしようもなくムラムラしてしまっている私にとっては毒でもあって、耳元で時折聞こえる彼の小さな寝言未満の声に、ひくりと喉が震える。ああもう、どうして同じ部屋にされちゃったかなぁ。

いつもならば一人一部屋用意してくれているのに今日に限ってバッティングだとかなんとかで、一部屋足りなくなってしまった結果、「じゃあわしらは同じ部屋でいいぞ」というカクの提案から同じ部屋にされてしまった。

「……、………はぁ」

 思わず零れ落ちるため息。明日も早いのでさっさと寝たいのに、下腹部が常に疼いて寝れやしない。寝返りを打って眠る彼を見つめては、口端から僅かに垂れている涎を指先で拭ってやり、暫くその寝顔を見ていたが、逆にムラムラしてしまうのは躾けられた体な以上、仕方の無いことなのだろうか。

「相変わらずまつ毛長いなぁ……」

 人よりも倍以上長く見えるまつ毛をじっくりと観察しながら、指先でそっと撫でると「んん」という短い音と共にきゅっと眉間に皺が寄ったので手を離せば、そのあとすぐに薄く瞼が開いて、虚ろな瞳が私を見つめた。

「……んん、……どうした、眠れんのか…?」
「…あ、ごめん起こしちゃった?」
「ん~~~~~……」

 眠そうに語尾を伸ばすカクは、甘えるように肩口に顔を埋めてはぐりぐりと頭を押し付けるので、普段は帽子で隠れた彼の柔らかな髪を手のひらで撫でて「あはは、眠そう。まだ起きる時間じゃないから寝なよ」と言うと、眠気を堪えるカクは肩に顔を埋めたままの体制でぽつりと問いかけてきた。

「〇〇は…眠れんのか」
「ちょっとね」
「……なんでじゃ」

 責め立てるわけでもなく、ただ怖い夢でも見たのかという確認を込めた問いかけに少しばかり、気まずさと、しょうもないことで起こしてしまったという申し訳なさを抱いては、肩に顔を埋めている彼の頭にもふりと頬を摺り寄せた。

「いやぁ…そういうわけじゃなくって。………少し、ムラムラして。」
「……ふ、……はは」
「シなくていいから少しだけキスしていい?」
「………可愛いこと言われて断る男はおらんじゃろうな、…ぁ」

 近くから聞こえる僅かな笑い声が酷く心地よくて、彼に少しばかり甘えると彼は顔を上げて眠気からいつもより緩く、穏やかな笑みを浮かべて「ん。」とキスを待つので、私は彼の頬に手をあてると唇に触れるだけのキスを贈った。食むように、戯れるように。触れるだけの口付けを何度か繰り返すと、カクはこそばゆそうに瞼を閉じていたが、気づけばまた小さく寝息を落としながら眠っていた。

「………可愛いやつめ。」

 相変わらず、満たされない欲求は続いたものの眠る彼が愛おしくて、寝顔を見つめては最後に額に口付けて足元にあるタオルケットを引き上げた。