少しはこっちのことも察しろよ、馬鹿。

「…東、彼女のことを頼む。」
「あぁ。」
「流石に此処まではRKの奴等も来ないと思うが、…東、何かあった時にはお前が嬢ちゃんを守るんだ。いいな。」
「はい、…任せて下さい。」
 八神と兄貴の背を見送ったあと、俺は病室の扉を閉めてベッドの側にあるパイプ椅子に腰を下ろす。しんと静まり返った病室には心電図モニターの音が響く。
 RKに誘拐された上に暴力を振るわれたことによる意識不明の重体。そんな状態で運び込まれた此奴は命に別状は無いと診断されたものの、露出した肌には包帯が巻かれ、口には酸素マスクがなされている。一言で言うならば、痛々しい姿だ。眉間に刻まれた皺がより一層深くなり、どうして、あの時死ぬ気で止めなかったんだ。ーーと、タラレバな後悔が壊れたラジオみたいに何度も繰り返される。
 布団から出された生気のない白い手にそっと触れると、両手で手のひらを包み込ながら俺はまるで何かに懇願するように己の額へと寄せた。
「さっさと目覚めろ…、…。」
「少しはこっちのことも察しろよ、馬鹿。」
 乾いた笑いと共に落とした言葉は誰にも拾われることなく、消えていく。部屋の中には無機質な心電図モニターの音だけが響いていた。