阿久津大夢は、決して優しいと言い切れるだけの男ではない。半グレ集団の最高幹部だし、入れ墨も入れて、明らかに違法行為もしている。だから、一般人である私は縁を切らなければいけないと思っている。けれど、たまに会った時に見せる和らいだ笑みを見てしまうと、別れを切り出す事なんて出来やしなかったのだ。
「久しぶりに会ったと思えば、随分と疲れてんなァ」
「大夢は元気そうね、……なんかアクセサリー増えてない?」
「お、分かるか」
別れを切り出す事も出来ず、喉に小骨が突き刺さったような感覚のまま話す。その一方で機嫌の良い言葉は弾み、彼は大きな指に嵌った指輪から、最近買ったのだと言う靴を自慢げに見せるがどれも高価なものばかりだ。「羽振りがいいねぇ」呟くと、阿久津は双眼を細めた後「お前も稼げるようにしてやろうか」と顎を掬った手が唇を撫でた。
「……なんてな、まぁお前みたいな鳥ガラ女にゃ無理だ」
「と……ッ?!」
「鳥ガラだろ、痩せっぽちでよ。ちゃんと食ってんのか?」
「食べてますう、一日三食……いや、二食……い、一食?」
「食べてねえじゃねえか。……ほら、ラーメンでも食いにいくぞ」
「え、ちょ、…っねぇ!まだいいって言ってないんだけど!」
「バーカ、お前に拒否権なんかあるかよ」
拒否の間も無く手を掴んだ阿久津が歩き出す。その傍若無人さは昔から変わらずで思わず文句も出かけたが、そういえば昔から何かを言って聞くような性格ではなかった。結局馴染のラーメン屋に連れられてラーメンに餃子、それからチャーハンまで奢られたものの……最後まで食べきる事は出来ず、その殆どを阿久津が食べることになった。