「馬鹿な奴。…だから手を引けと言ってやったのによ。」

 型崩れもなく眠るような仏を見て俺は小さく言葉を落とす。手袋越しでも分かるひんやりとした冷たさと、柔らかさを失った肌。昨日軽口を叩いていた唇は硬く閉ざされ、直前に下唇を噛んでいたのか下唇の中央部には血が滲んで固まっている。
身内から仏になったのは初めての出来事ではないのに、妙に呼吸が重くなるのは何故だろう。まるで呼吸を忘れているようだと息を吐き出して、もう一度吸い込むが、虚しさが募るだけで肺まで呼吸が届くことはなく抜けていってしまう。
真意に気付いてはいけない。
 俺は一人でに呟く。原因糾明も、それからこの感情の意味の糾明も俺の管轄ではない。俺は証拠品として残された携帯に手を伸ばしては、残された文字列を瞳に映して乾いた笑いを落とした。