黒岩(JE)
「はは……××、お前もう要らないってよ」
乾いた笑い混じりに復唱する黒岩。可哀そうになぁと続ける言葉は嘲笑にも聞こえるが、向けられた眼差しはやけに真っ直ぐに見える。「良かったじゃねぇか、こんなクズと手が切れて」それは幾ばくか静かに続いて、笑いを滲ませた瞳が男へと向けられた。
阿久津(LJ)
「お前、見る目ねぇなァ……それに、いい度胸だ」
恰幅の良い男が肩で風を切りながら此方へと近付いてくる。怪訝な元恋人に身を寄せて断りなく自撮りをする彼は「おー、撮れた撮れた」と言いながら携帯を確認するが意図が分からない。元恋人が何なんだよと尋ねると、阿久津はそれに構わず女へと近付いて「だから言っただろ、俺にしろって」と呟いた。
難波(龍7)
「……じゃあもう返してやらねぇよ」
要らないんだろ?じゃあコイツはもう俺のもんだ。腕を引いて自分の方へと引き寄せる難波。その言葉尻は素っ気ないが、難波の身なりはお世辞にも綺麗とは言えない。ゆえに身を引き寄せて敵意を見せたとて「小汚えホームレスが何言ってんだ」と嘲笑が返ってくるだけ。たまらず××は言い返そうと口を開くが、それよりも先に難波が口を開いた。「確かに俺はろくでもねぇホームレスだ。飯もゴミを漁ったり拾ったり。物乞いして得たものばかりで恰好もつかねぇ。……でもよ、捨てる神あれば拾う神も有りっていうだろ?」これでも目利きは得意なんだぜ、そういって捨てる選択肢をした事を後悔するように煽る難波は笑い、男がその場を離れると、息を吐き出しながら体を離した。
「あー……久しぶりに修羅場を感じたじゃねぇか。見ろ、この手」
なっさけねぇよなぁ。見せられた手は分かりやすくブルブルと震えている。けれども彼が勇気を出して助けてくれたのは確かであり、××は「ありがとう、助けてくれて」そう言って手を包み込むように握ると、彼は気恥ずかしそうに表情を歪ませた。
趙(龍7)
「へぇ……じゃあおれが貰ってもいい?」
悲しみの中に佇む××に向けて、優しい笑みを浮かべて手を掬う趙。突然すぎる提案に、一体何の冗談だと××は思うが、それを知ってかしらでか、指の付け根へと唇を押し付ける彼は茶目っ気強くウインクを贈る。言葉だけでは伝わらない、真っ直ぐな眼差し。それが安堵させるためのものであることは明らかで、「俺さぁ…ずーっと××ちゃんにアプローチしたかったんだけど、彼氏がいるって言うから控えてたんだよねぇ」と続ける言葉は、これまでと変わらず穏やかであった。
春日(龍7)
「いるとか要らねえとか、××ちゃんは物じゃねえだろ」
そして、それはお前が決める事じゃねえ。至極全うな事を言いながら危機を察して××の前に立ち、後ろへと隠す春日。その背中は大きく頼もしいが、元恋人の男からすれば正論も、彼の存在も目障りでしかないのだろう。男は激高して殴りかかるが春日が避ける事はない。ただ一発の拳を顔面で受け止めると、避けもしない春日に驚く男を睨みつけた。「……お前に××ちゃんは似合わねえよ」普段とは異なる、静かな声。男が怯え逃げていくと、彼は小さく息を吐き出して振り返りながら笑みを浮かべた。
「……ったく、いってぇなぁ……。……××ちゃん、もう大丈夫だぜ」
俺が追っ払ったからな。彼の笑みは、眩しい。