マチアプに登録するようで

「アンタもこれで魅力を磨いたらどうだい?」

マッチングアプリ・マチコさんを紹介された夢主は、さっそく登録をするようで。

山井

「山井さん、この写真とかどうですかね」可愛く撮れてますか?山井に懐いた××は隣に座って自撮り写真を見せる。対する山井はそれを小馬鹿にするわけも無く眺めていたが、その一方で彼が評する事は無い。それどころか一度下に落ちた視線は彼女へと向いて、尋ねる声色はやけに静かだ。「どうしてまた、こんなものをしようと思ったんだ。……男漁りするようなタマでもねえだろう」「……えっと、その、もう少し魅力が欲しくって」別に男遊びがしたいわけではない。ただ、開発者であるマチコさんに言われた魅力磨きという言葉が響いただけ。それに、まさか山井に好意を抱いているから魅力を上げるんだとは言える筈がない。よって××の言葉は酷く曖昧で、言葉を濁すと、山井は「そうかい、それじゃあやる必要はねぇな」と言い、向けられた携帯の画面を覆うようにして握り、画面のシャットダウンボタンを押した。

「マッチングアプリ……ねぇ」

柄にもないだろうに、自撮りなんて珍しい事している様子に訳を聞く。それから「××ちゃん、おれとも撮ろうよ」とさり気無く自撮りに割り込んでツーショットをしてみたが、中々良い感じに撮れてしまった。「趙が入ってどうすんの」プリプリ怒りながらも削除しない様子は微笑ましいもので、「そういうマチアプってサクラもいるらしいよ。……どう、××ちゃん。そんなものよりも俺にしとかない?」と柄にもなく売り込んだのは、ちょっとした嫉妬心からだったように思う。彼女が別の男を相手に一喜一憂するのも、そのまま会いに行く事も、到底許せなかったのだ。「えぇ?趙ってそんな冗談を言う人だったっけ?」「傷つくなぁ……俺、冗談は言わないんだけど」「よく言うわよ」……まぁ、彼女は本気だと思っていなかったが。くそ、好感度が足りてなかったか。

難波

「マッチングアプリのマチコさんだぁ?へっ、どうせサクラだろ」

小馬鹿にした物言いは右から左に流す。「おらよっ」なんて言いながらウインクした自撮りは中々可愛く撮れたようで、登録後にはマッチング成功の通知が飛んでくる。マッチングした相手の年齢層も様々で、色々と下心が透けているものも多く見えるが……その間も難波は「コイツはねえだろ」だとか「どうせ無職なんだろ、俺には分かる」と余計な横やりばかり入れてくる。お前は私の親か。それをぐっと堪えて「……難波、俺が寂しいから行くなって言ってくれてもいいのよ」と言うと、難波は真っ赤な顔で吼えた。「誰が言うかよ!」