趙
「あらァ……××ちゃんには大きいみたいだねぇ」
普段通り、いつも通り。微笑ましい様子で眺める彼の言葉は柔らかい。しかしその一方で、大きく口を開けて頬張る様子を携帯で撮影するのは普段通りではなかったか。「ねぇ、アレ……」「シッ、野暮な事は言うもんじゃねえよ」何かを察したような紗栄子や難波の喋りには構わない。ご機嫌な趙の撮影は、暫く続いていた。
マスター
「……、……嬢ちゃんにはでかすぎたか」
隣で食べる春日には丁度良く見えるのに、彼女には大きすぎるように見える。その時、以前握り飯を作った時にも「マスターが作ったおにぎりは大きい」と言われた事を思い出して、どうやって食べようか恵方巻を傾けて口に入りそうな角度を探る彼女の口を見た。
「…………小さいな」「え?」「あぁ、いや、此方の話だ。それは足立にでも渡してくれ、お前の分は作り直そう」
作り直すなんて申し訳なさすぎる。そんなことを言いたげに小さい唇が「でも」と言ったが、折角作るのだから美味しく感触してもらいたい。ただ、それだけだ。「気にするな、……元々、何も考えずに作って少し量が多いかもしれねえと思ってたんだ」そう言うと彼女は僅かに頬を緩める。それに対して「その小さい口じゃ入りそうもねえからな」と言ったのは、完全に余計な一言だった。「それアウトじゃなぁい?」趙が突っ込むと「なんだ、珍しいなぁ!」と足立から矢鱈とウキウキした顔で絡まれることになった。
春日
「おお……、××ちゃんにはでかすぎるんじゃねえか?」
小さい口なのに、あんなに頬張っちまって!案の定というべきか、海苔が解けてぼろぼろと中身が零れる様子に「あーあー、言わんこっちゃねえ」と空き皿を下に寄せてサポートする一番。……なんというか、可愛いとか、そういうことよりも兎に角喉に詰まらせないかと心配が勝る。
「頑張れ、××ちゃん!あと少しだ!」「……!」「喋れないから苦しいよな!大丈夫だ、残りはあともう少しだ、ゆっくりでいいからとにかくきちんと噛むことが重要だ!」……そうして甲斐甲斐しくサポートを続ける一番と、頑張って恵方巻を頬張る××の間に青春じみた光景が続き、完食後に流れる妙な感動を見た難波と紗栄子は「なんだありゃ」「ナンちゃん、それは言っちゃ駄目よ」と零した。
ソンヒ
「…………見るな」
彼女が頬張る姿を見た後、それを見る男たちを冷ややかに見る。それから適当な雑誌で彼女を隠すと××は不思議そうにしていたが、ソンヒは彼女にだけ笑みを見せた。