おわりの話

 私がもし死ぬことがあるのなら、彼の胸の中が良いな。
 それを彼に話したことはない。たぶん、彼は嫌そうな顔をするだろうから。

 一年が一日のように過ぎていく。瞬きをすると、気付くと、二年、三年、十年が経っていた。真っ黒な額縁と共に帰った城は、寒いだけでさして面白くもないけれど、監視から外れた生活というのは案外快適だった。
 時折、偶然電波が入ったように一人喋り出すアンティーク品の電伝虫をラジオ代わりに、ゆっくりと体を倒した私は、「眠い、なぁ……」と言いながら、たくさんの氷漬けになったものを抱きしめる。
 氷漬けの指輪。氷漬けの花。氷漬けの帽子。氷漬けの写真。氷漬けの。
 胸元は氷でいっぱいで、冷たい。けれど、不思議と胸は満たされたように暖かかった。

 春の訪れもなく、厳しい冬は続く。
 その永遠の中、ひっそりと竜は瞼を閉じたが、その穏やかな眠りを見たいつかの物は「まるで幸せな夢を見ているようだ」と息を落とした。

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