特に予定も無いけれど、目的もなくぶらついた先でゲームセンターを見かけた。特にゲーマーと言う事は無いが、吸い込まれるように向かう足。どうしてゲームセンターって見るだけで心が躍るのだろう。しかし、今日一緒にデートをしているカクはそれを見て「一緒に行こうか」と言うわけでもなく首根っこを掴み「こらこら、また金を溶かす気か?」と言って止めてきたが、彼が私に甘い事はよく知っている。
私は手を合わせて、精一杯のかわいい顔で言った。
「行きたいなぁ?」
「はぁ?ムカつく顔じゃの~」
「あれ?」
おかしいな、全然効いてない。
口をへの字にするカクを見て首を傾げたが、帽子のツバを下げて「少しだけじゃぞ」と歩き出すあたり、しっかり効いていたのかもしれない。ただ、その一方で手を繋いでくるあたり散財するのではないかという点では信用されていない気もするが。
ゲームセンターの中は、UFOキャッチャーが殆どを占めているような大型のパリピ仕様であった。中にあるものはやたらと大きなぬいぐるみばかりで、中には大きなお菓子もあったが、カクいわくあれはかなりお金を使うとのこと。であればなんだったら良いのだと思いつつ、辺りを見回していると、店舗の中央にある初心者オススメとPOPが描かれた台に、おおきなキリンのぬいぐるみが目に飛び込んできた。
おおきな、おおきなキリン。それこそ抱き枕にできるようなサイズだ。キリンも抱き枕にされることを望んでいるのか瞼を閉じたようなデザインで、思わず足を止めて釘付けになっているとカクも足を止めてキリンを見た。
「これが欲しいのか?」
「え?」
「足が止まっとるからのう」
「だってこれキリンだよ、カクの好きな動物じゃない!」
「うん?ああ、まぁ、……そうじゃのう」
「だからっていうのも変だけど、キリンを見るとカクの好きなものだ!って思って足が止まっちゃうんだよねぇ」
「……そうか」
ちらりと隣を見る。キリンを見つめる彼の瞳は普段と変わりのないようにも見えたが、視線に気づいてじとりと半眼で睨むあたり照れていると見た。私はへらへらと笑いながら「私もキリン好きだしね」と言うと、彼は「そうか」とだけ短く言うと財布を取り出して小銭を投入口へと滑らせた。
「あ、いいよ私がやる」
「お前にやらせたらいくらかかっても取れんじゃろ」
「そ、そんなことは……」
「この間のあの妙ちくりんなフィギュアはいくらかかったんじゃ」
「………」
思わず目をそらす。だって可愛かったんだからいいじゃないか。結局フィギュアだって取れたわけだし。ただカクの視線があんまりにも厳しいものだから目を逸らしていると、軽快でポップなメロディが響き、アームが動き出す。多分カクが操作を始めたのだと思う。顔を上げるとアームがキリンの首から胴体を掴んでいたわけだが、初心者オススメと書いている台なだけあって随分とアームが強いように思う。一番上まで上がったキリンはカクンと頭を揺らし一つのアームから足が抜けてしまったが、なんとか持ちこたえて出口付近までやってくるとタイミングを見計らったように落ちていった。
凄いまさか本当に取れるだなんて!
「ほれ、」
しゃがんで取り出し口からキリンを取り出すカク。もふ、と顔に押し付けるように渡されたそれに思わず興奮してしまって「すごい!」「カク上手!」「可愛い!」「すき!」「大事にするね!」と文章にもならない言葉が溢れてしまい、気が付けば、キリンを抱きしめた先でカクの顔が赤く色づいていた。
「………カク?」
「……褒めすぎじゃ、馬鹿」
「本当のことなのになぁ、……ふふ、ありがとね」
「……おん」
ぎゅうと抱きしめたキリンは大きくて、暖かい。しかしながらいかに暖かくとも、可愛くとも、隣にいる彼と手が離れているのは寂しくて、自分から彼の手を繋いでみると彼は目元を和らげるようにして笑み「他のも見てみるかのう」と呟いた。