「何か作ってだぁ……?全く……仕方のねぇ奴だなぁ」
なんでおれがと言うには疲労の強い顔。肉体的疲労であれば、若いねーちゃんが何を言ってんだと笑えたが、どうにも肉体的疲労だけではないように見える。足立は頭を掻いて息を吐く。それから立ちあがった彼は、一番に断りを入れてから冷蔵庫を開いてみたものの、まるでろくなものがない。みそ鯖缶に、水菜、卵。あとは冷蔵庫の外にある半端な数のお吸い物。……まぁ、これだけあれば上出来か。
まずは適当なポリ袋を取り出して、味噌鯖缶を汁ごと袋に入れる。それから水菜も適当に千切って袋に入れてゴロゴロとした鯖の身部分を潰すようにして揉みこむ。次にそうめんのつゆなんかを入れる時に使うつゆ鉢に、卵、少しの水、顆粒タイプのダシを入れてよく混ぜる。混ぜたものはふんわりラップをしてレンジでチン。これで十分足らずで二品出来たわけだが一番も、それからたまたま来ていたサッちゃんなんかも懐疑的な様子であった。
「……足立さん、なんだこれ」
「……え、これもしかして茶わん蒸し?」
「おう!水菜の味噌鯖和えと、具なし茶わん蒸しだ!」
「具なしなんだ……」
「それは一番に言ってくれ、こいつんちの冷蔵庫なーんも無えんだから」
「だああ!そんな茶わん蒸しに使うもんなんてそうはねえだろ!なぁサっちゃん!」
「えー…?うーん、まぁ、そうかも?」
「ほらぁ!」
ワアワア言っている一番を横目に、座卓に並べた二つの品。ついでに箸とスプーンを渡すと彼女は少し驚いていた顔をしていたが、どちらも作り慣れたものだ。失敗はあるまい。
「あ、美味しい……」
気泡が入って見てくれは悪いが、ダシの美味しい茶わん蒸しと、よく味のしみ込んだ味噌鯖和えの水菜サラダ。どちらもたった数分で用意されたものだとは思えないほど美味しいと、彼女が瞬く。その瞳はなにか小さな星をパチパチと爆ぜさせているようにも見えて、思わず頬が緩むのは、誉められたからか、それとも彼女に笑みが戻ったからか。……ああ、いや、どちらもか。
足立は気恥ずかしさを誤魔化すよう頭を掻くと「元気がねえ日も、飯を食えば元気が出るもんだ」と笑い、彼女の隣に腰を下ろした。