みかん繋がり

 海軍本部の庭先で、いい感じの枝を拾って振り回していたら何やら辺りが騒がしくなりはじめ、あんちゃんが帰ってきた。

「あんちゃん!おかえり!」

 しかし、あんちゃんはいつもみたいに頭を撫でまわしもせず、何かを抱えている。その顔色は何か緊急を要するような、とにかく切羽詰まったもので、不思議に思い抱えたものを見上げると、抱えた毛布の隙間からはダランと子供の足が伸びていた。それも、その足は赤子の様に小さく、まさか死体じゃと思ったが指先がウゴウゴと動くあたり、生きていることは間違いないようだ。

「あんちゃん、その子」
「あー……、この子は大変な病を患ってて、おれが面倒をみることになってんのよ」
「あんちゃんが?」

 尋ねると、あんちゃんが少しばかり思案を巡らせるように黒目を上に動かす。それから長い足を折り視線を合わせると彼は毛布に包まれた子供を見せてくれたが、その幼さといったら。殆ど赤ん坊に近いではないか。しかし赤ん坊のように小さいそれは茹で蛸のように真っ赤になっていて、比喩でもなんでもなく、近くにいるだけで熱気が伝わってくる。
 そして、それを見て体温を下げるように氷を纏う手が頬を撫でるが、熱が高すぎるのか氷が一瞬で解けるようにシュワシュワと音を立て、飛沫が上がる。
 とてもじゃないが、この赤ん坊が耐えられるような熱には見えない。

「なんて熱が高いんじゃ…この子死なんのか?」
「死なないようにおれが見てるってわけ」
「……そうか、……じゃあ、あんちゃん忙しくなるな」
「そーね、まぁ、元気になったらこの子と遊んでやって」
「まぁ、別にええけど……しかし、蜜柑頭じゃな」
「ハッサクが蜜柑頭の子供の世話か、いいじゃないの」
「……ええんか?」
「いいでしょうよ」

 ぐっしょりと濡れる蜜柑色の髪。彼女が元気になれば、この蜜柑頭はもっとふわふわに揺れるんだろうか。「ふぇ」小さく零れる、愛らしい声。その声を聴くと、なんだかむしょうにやるせない気持ちになってきて、わしはジトリとあんちゃんを見て「はよ行って治療せんと!」と言ってはみたが、へぇへぇ言いながら歩き出した際に向けられた笑みが気恥ずかしくて仕方がなかった。