妖の国は、現世で言う江戸時代の時が流れている。ゆえにクリスマスなんて洒落た西洋行事は無いのだが、元は人間であったアネッタと交流をしていくうちに、すっかり定着してしまった。
初めてクリスマスの行事を取り入れたのは、彼女が五歳だった頃。親を亡くした彼女がワアワアと泣きながら「サンタさんもこなかった!」と言うのがあまりにも不憫に思えて「サンタさんが間違えて、此処に置いていってしまったらしい」と適当にその日持っていた手鏡を渡した事から始まる。
そんな彼女も十七歳。大人に差し掛かる頃合いになり、恐らくサンタクロース自体はもう信じていないと思う。しかし、こちらは西洋行事がすっかり定着してしまったのだ。何か渡してやりたいと思うのも愛情だろう。
それなのに、アネッタが物を強請る事はない。それどころか「それよりも」と手を引いて「一緒に寝たい」と強請る彼女は甘え上手だが……それでは普段通りになってしまう。なにか、してやれることがあればよいのだが。
「……、……」
そうして、彼女が寝静まったのを見計らって身を起こす。ついぞ彼女に渡すものが決まらず、アレやコレやと買い込んでしまった今日を迎えてしまったが……まぁ、どれも上等品。どれか一つは気に入るだろうと玉手箱に詰めて枕元に置くと、静かに寝息を立てながら眠っていた彼女が身じろいで、探るように隣へと手を向けた。
「ん……、……?」
瞼は開かず、袖から伸びるほっそりとした腕が自分を探している。それが愛おしくて仕方が無いと手を取ってもう一度隣に寝転んでみると、アネッタはそれを感じ取ったように身を寄せて、胸元に頭を摺り寄せた。
「フフ……かわええ奴じゃのう……」
彼女と出会って、もう十二年ほどが経った。しかし、こうして身を寄せて抱き合えるようになったのは彼女を娶って以降のこと。だからこそ喜びもひとしおであり、いま感じる温もりは自分のものだ。カクは腰に腕を回してぎゅうと抱き寄せると「今年からは此処にサンタクロースが来てくれるぞ」そう小さく囁いて瞼を閉じる。
さて、朝になったら彼女は喜んでくれるだろうか。どうせならば開封のところから見たいが、この愛おしい温もりのなか朝早くに目覚めることが出来るかどうか。……そういえば、彼女がいない時はこの温もりがなかったわけだが、自分はどうやって眠っていたのだろう。瞼を瞑ってから一層強く感じる温もりは眠りへと手を引いて、意識が落ちるまでにそう時間はかからなかった。