仕事初めの彼らに会って

正月が明けて仕事始めの日。
鬱々と出勤していると彼らとバッタリ出くわしたそうな。

一番
「よォ!おはよう××ちゃん、今日も頑張っていこうぜ!」
髪をオールバックにして、一つ縛りに決めた一番。パリッとしたスーツは一張羅だと自慢していただけに汚れ一つない状態で、胸元にある金枠のネームプレートが陽光を受けてきらりと光る。……彼はどうして朝から気合が入った状態なのだろう。不思議に思いながらも太陽燦々な笑みを見ていれば、自分もきょう一日くらいは頑張ろうかなと思えてきて「一番、私の背中を叩いて。気合入れたいの」と言って背中を向けると、彼は突然狼狽え始めて「××ちゃんを叩くなんて出来ねえよ……」と力なく零した。

サッちゃん
「あれ、××じゃない。いまから出勤なの?……そんなに鬱々としてるのなら、××もうちの店で働く?」
夜の仕事を終えたサッちゃんが、鬱々としている私に駆け寄って声を掛ける。向けられた言葉は鬱々とした表情を見ての励ましだろう。けれど話を進めていくうちに「××は可愛いし、気が利くし、元がいいから化粧映えもするだろうし……あれ、本当にいい逸材かも」とひとり指折り数える彼女は「採用!」と親指を立てるので、思わず笑ってしまった。……うん、元気が出た!

難波
「よぉ、お前も出勤か?サラリーマンは辛いよなぁ……ホームレス時代が懐かしいぜ」
まぁ平々凡々なこの生活も悪かねぇが。お陰でいい服も着れてるし飯にも困らないからな。最寄り駅まで歩く傍らで難波がしみじみと語り、幾ばくか穏やかになった笑みを向ける。そこで「じゃあ、もう未練はない?」と尋ねたのは純粋な疑問から。難波はそれに頭を掻いて悩む素振りを見せていたが、「お前の差し入れが無くなっちまったのは寂しいかもしれねえな」と言ったのは少しだけ意外だったかもしれない。
出会った頃は「金持ち気分かよ」と悪態をついていたのにな。そんなことを思いながら「じゃあお弁当でも作って差し入れしようかな。可愛いタコさんウインナーでも入れてさ」というと、彼はえらく驚いた顔を見せるので、なんだか冗談とも言えずに妙な気恥ずかしさだけが残ってしまった。