疲れた彼女に励ましを

「疲れたぁ……!」
四月の初めは、学生も社会人も関係なく忙しい。サバイバーのカウンターにて、息を吐き出しながら突っ伏す彼女の顔には疲労の色が滲んでいた。……なんだか普段よりもくたびれているような。その様子に彼は一言呟く。


マスター
「……よぉ、随分とくたびれてるな」
グラスを磨きながら、穏やかな低い声が笑いを滲ませる。指紋なく磨けたグラスは自分の手元に。其処には頼まれてもいない飲み物を注いで、「サービスだ」と言って出したが――少々特別扱いが過ぎただろうか。「マスターありがとお……」と力なく零す彼女に、マスターは息を漏らすように笑った。

トミザワ
「何やったらそんなに疲れるんだ……?」
呆れと心配が入り混じる声掛け。手持無沙汰感にグラスを手にすると、中で氷がカランと崩れて、それを合図にトミザワは切り出した。「なぁ、このあと外でも歩かないか。そりゃ疲れてるかもしれないけど、外歩けば気分転換にもなるだろ?」――幸いこの辺りは出歩くには丁度良いスポットが多くある。トミザワは言い終えたあと「まぁ、よそ者の俺が案内出来るかは分からないけどさ」と少し気恥ずかしそうな顔で目を逸らし、頭を掻いた。

難波
「なんだ、随分と疲れてるじゃねぇか」
社会人(学生)ってのは、そんなに疲れるのか?笑い混じりに尋ねる難波に、ジトリと睨みが返る。普段は何ようと返す癖に、随分と余裕がないようだ。……まぁ、この時期を考えれば納得ではあるが、それにしたって四月初めにこんなに疲れ切って大丈夫なのか?難波は突っ伏したままの彼女を見る。それから××に手を向けて背中――ではなく頭をぽんぽんと撫でるように優しく叩くと「ま、お疲れさん」と気遣った。

春日
「分かるぜ××ちゃん、この四月の初めっていうのはやたらと忙しいんだよなぁ……」
四月ってのは、なにかと物入りで金を借りる奴が多くてよ極道も集金で忙しいんだよ。ハローワークだって、四月の年度替わりに意識を改めて働くぞって奴が多くてなぁ……嬉しいことだよなぁ。しみじみと饒舌に語る一番の声は、忙しいと言う割に明るい。多分、こういう日々の変化も楽しめる人なんだ。なんだか彼の言う事を聞いていると、自分も頑張ろうという前向きな気持ちになってくる。だから、一番を見ていたのは憧れとか、尊敬とか、そういった感情からだったように思う。なのに一番はハッと我に返ったような顔で「……いや、というか俺の話よりも××ちゃんの話を聞くべきだよな?!」とひとり慌てだしたので、××はまた笑みを零した。