ネズミーランドにいこうよ

ソンヒ
「…………私でいいのか?」
感情の見えない声。ピクリと眉が動いた気がするが、それが驚きなのか、喜びなのか。機嫌がいまいち分からない。けれど、それが何であろうとも――「うん、ソンヒと行きたくって」。だってチケットは二枚あるんだ。ペアの相手を決めるのなら、私はソンヒと行きたい。笑みを向けると、ソンヒは「そうか」と短く瞼を伏せたかと思うと、「では、予定を空ける必要があるな。どうせならホテルも取ってしまおう」そう言って携帯を取り出すと「来月の予定だが」と何処かへと話だし、それが終わるや否や「来月の土日であれば全て都合がつくが、どうする」そう訊ねた。

沢城
「テーマパークだぁ?……行くわけねえだろこの馬鹿。逆になんでお前の誘いで行くと思ったんだ」
相変わらずツレない返答の沢城。そりゃあまぁ、別に付き合っているわけでもないし、どちらかと言うとお世話になっている立場ではあるけども。
「じゃあ真澄さんと行こうかなぁ」「なんだ、俺を指名するのか?俺は構わねえが……」「いいわけないでしょうよ、オヤジがテーマパークだなんて他のモンに笑われちまう」「そうか?」この会話だって十分ほかの組からすればユルユルなのだろうが、抗争なんて無い方がいいに決まってる。「じゃあ、真斗さんと一番くんも呼んでみんなでいきましょうよ~、荒川組テーマーパークの旅とかいって」「おお、真斗とイチも一緒か。……そりゃあいいかもしれねえな」「オヤジ……勘弁してください。コイツが付け上がっちまう」沢城さんの大きな手が首根っこを掴んで、猫のようにグイと引き寄せる。けれどもチラリと見上げた顔に威圧感はなく、フフと笑うと「何笑ってやがる」と睨まれることになった。

春日
「ネズミーって……あの日本で一番有名なテーマパークだよな?」
てっきり両手をあげて喜ぶと思ったのに、何か理解が追い付いていない様子で確認をする一番。……もしかして、嬉しくなかったかな?そう思ったのは数秒。とつぜん両肩をがっしりと掴んだ一番はキラッキラに目を輝かせながら言った。
「××ちゃん、おれはよ、実はあのテーマパークに行ってみたかったんだよ……!」「あ、ほ、ほんとう?押し黙ってるから迷惑だったかと……」「迷惑なわけがあるかよ!ただでさえ××ちゃんから誘ってもらったのに、その上ネズミーランドだなんて……。おれぁ昔っからこのあたりにいたんだけどよ、ああいうところはからっきしでよ。……楽しみだなぁ、なぁ、いつ行くんだ?」
嬉しい理由に混ぜてもらえた自分という存在。それは、彼の中でどれだけ大きなことなのかは分からないが、眩しい笑みが嘘じゃないって言っている。なんだか胸が熱くなって、少しだけおなかがこそばゆくなって。それを誤魔化すように「カチューシャも買おうね、ネズミーに言ったらカチューシャを付けることが義務だから」なんて冗談を言うと、一番はそれをえらくまじめに受け取ったようで「オイオイ、本当かよ××ちゃん……こりゃあ、似合うもんを探さねえとなぁ」と、驚き半分喜び半分と言った様子で呟いた。