わしの幼馴染はジャブラと仲が悪い。
顔を合わせればしょうもない事で言い合っておるし、その度にわしが仲裁に入ることになっている。よく飽きんなと思うが二人からしたらアイツが悪い、らしい。じゃが任務から帰ってきたわしの目の前に映った光景はなぜか普段とは真逆なそれで、ジャブラの隣に座り甲斐甲斐しくジャブラの無駄に長い髪を手入れするアネッタがいるではないか。
「ねぇ、ジャブラ。やっぱり髪下ろしていきましょうよ」
そっちの方が格好いいわよというアネッタはいつにも増して穏やかで、ジャブラに身を寄せながらブラシで髪の毛弄るその姿はーー、一言で言えば面白くない。
わしの腹の奥をドス黒いものが蝕んでいく感覚を覚えながらもアネッタに歩み寄り、いつものように脇の下に腕を通す羽交い締めの形でひょいと持ち上げると、アネッタが「わあ!」と声を上げた。
「わ、ビックリしたー…カクおかえり。」
ぷらんと自分よりも小柄なアネッタは羽交い締めにされることで床に足が付かずぷらんと浮いておったが、いつもされることだからか特に気にした様子もなく首を捻りこちらに視線を向けた。
「ああ、ただいま。…なんじゃ珍しいな、二人が喧嘩しておらんとは。」
「じゃあなんで持ち上げんのよぉ」
ジトリと睨むアネッタ。
「これはー……、……いつもの癖じゃ」
確かに、喧嘩でもないので羽交い締めにしてジャブラから引き離す必要も無かったかもしれない。
苦し紛れの言い訳を並べるとアネッタは「癖って」と突っ込みを返してくれたが、隣の男は此方を見ながらにやにやと下世話に笑った。
「とかなんとか言ってぇ、嫉妬じゃねーのかカク!」
「ち、違うわい!」
「ち、違うわい!だとよ!吃ってんじゃねーか!」
ぎゃははと品のない笑いが腹立たしい。ジャブラはいつもこうじゃ、10以上離れとる割に人を嘲笑う。じゃからわしは苦手なのだと眉間に皺を寄せていると、羽交い締めからするりと抜けたアネッタがわしとジャブラの間へと入る。
「えーと、とりあえず説明しますと、1時間後にカジノに潜入して情報収集しなきゃいけないんだけど、そこにあたるのが私とジャブラってわけ。」
「なんでよりにもよってお前たちなんじゃ」
「ジャブラの顔が一番カジノにしっくりしてたのよ。フクロウ、クマドリじゃ目立つし、ルッチとカクも任務に出てたしね。」
「はぁ…それで、○○は?」
「お、いいこと聞いてくれたなカク。○○は俺の愛人役だ!」
言いながら間に入った○○の腰を抱いて引き寄せるジャブラに○○は「近い!」と言い猫のようにジャブラの頬を手のひらで押したが「愛人なんだからこれくらいの距離感になんだろうが」と返され押し黙ってしまった。
「ほら、俺たちはどんな設定だ?言ってみろ」
「…バカスカお金を使う成金男とそれにベタベタな愛人」
「だろ?ならくっつく必要があるってわけだ。」
確かに我々CP9が任務に対して下手をこく事は許されない。その場で合わせようなんて中途半端な覚悟は直ぐに怪しまれてしまうーーが、分かっていたとしても頭が納得しちゃくれんようで、腹の中を蝕むどす黒い感情が、気付けば○○の手首を掴んでおった。
その後、ターゲットが暗殺されたとかでカジノ行きは無くなって心の何処かでホッとしてほしいし、「カクなんでそんなに機嫌悪いの」って聞かれて「面白くないんじゃ」と言ってほしい。(なお、まだ付き合ってない。)