デート当日、待ち合わせ場所にて

【楡井】
「わぁ……××さん、……か、かわ…可愛いです……」
 普段とは異なる気合の入ったデート服。ぽー…っと見惚れる彼はどうやら反射的に零したようで、言い終えるや否や、我に返ったような顔で口を押えるが後の祭りだ。額まで真っ赤な楡井。その表情は気恥ずかしさに満ちていたが、どうせならしっかりと言ってもらいたい。だって、今日は待ちに待ったデート当日なのだから。
「ねぇ、にれ君。…どうかな」
 小さく尋ねた言葉。すると、彼はまた熱湯を被ったように顔を赤くして言葉を詰まらせたが、ぎゅっと拳を握ると、初めに抱いたその言葉を呟き、照れ臭そうに笑みを見せた。
「っ可愛いです!すごく、……とっても。…僕なんかには勿体ないくらい、凄く可愛いです」

【椿野】
「やだもー、いいじゃなーい!!」
 待ち合わせ場所で、ひときわ目立つ野太い声が弾む。
 一緒にデートしない?と誘われたのは少し前のこと。あの椿ちゃんとのデートだ。きっと恋人でもない相手でもオシャレをしてくるのだろうと思ったが、予想通り、いや、予想以上に気合の入った服装だ。なんだか彼を見ていると、自分の服装がひどく幼く見えてしまい、慣れない事はするものじゃないなと視線が落ちる。
 椿野は不思議そうな顔をしたあとに笑みを向けた。
「アタシはその服装、いいと思うわよ。デートするからって気合を入れてきてくれたのね」
「……うん。でも、椿ちゃんほどオシャレにはなれなくて……その、隣歩いてて、恥ずかしくない?」
自分で言うのもなんだけど、あんまりセンスなくって。眉尻を下げてぎこちなく零すと、彼は白い歯を見せて、にっかりと笑いながら言った。
「こんなに可愛い子が隣を歩いて恥ずかしいわけないじゃない!……でも、そうね、自分の服装が気になるのなら、今日のデートは服を見に行くって言うのはどう?××なら多分可愛い系もいいけど、ボーイッシュ系も似合うと思うのよね~!」
さ!善は急げっていうし、行きましょ!今日はめいっぱい選ぶわよ~!弾む声に太陽を掲げたような笑み。さりげなく掬われた手には指が絡んで、手を引かれて歩きだすことになったけれど、いつしか気持ちも彼と一緒に前を向いているような気がした。

【十亀】
「…はは、驚いたねぇ。随分とめかしこんじゃって」
 それってもしかして、オレのため?と十亀。しかし、問いかける割に普段よりもめかしこんだその姿が自分とのデートのためだと理解しているのだろう。彼の口元は緩み、色眼鏡の奥にある垂れ目が普段以上に和らぎ笑みを見せる。彼の暖かな手はするりと頬へ。そのまま頬を撫でた手は、彼女の耳にあるイヤリングに触れるが、白と黄色の色合いはどこか獅子頭連を彷彿させる。
「可愛いことしてくれるよねぇ……××ってさ」
 揺れるイヤリングに、動揺を示して揺れる瞳。十亀は赤く染まりゆく耳を見つめた後、そっと耳元で「可愛いね」と囁くと、続く彼女の反応に肩を揺らして笑い、そっと手を取った。

【兎耳山】
「なになに、それ、その服可愛い!××ちゃんはいつも可愛いけど、でもいつもよりもかわいい!服も、髪の毛も!」
 ぴょんぴょこぴょん。言葉も体も跳ねる彼はいつだって元気いっぱいだが、今日は特に機嫌が良い。待ち合わせ場所で、注目を集めるほど大げさに褒めちぎる兎耳山。しかしジイと顔を覗き込んだあと、にぱっと花が咲くように笑むその顔に嘘の色は無い。
 それどころか彼はぎゅっと手を掴むようにして手を繋ぐと「あーあ、オレももっと××ちゃんみたいにオシャレしてくればよかった~。そういえば、いっつもこの一張羅だもんな」ぶうと唇を尖らせて歩き出し、「でも、それが気に入ってるんでしょ?丁子くんは」と言うと、彼はそりゃあもう嬉しそうに笑い、「そう!オレのお気に入りだから!」と繋いだ手をぶんぶんと揺らしながら声を弾ませた。