JKちゃんはお土産を買ってきたそうで

マスター(+桐生)
「へぇ、随分と洒落たグラスじゃねえか」
差し出された箱に入っていたのは、ボヘミアングラスであった。真っ直ぐなストレート柄ではなく、あえて不揃いに削る事で“氷塊”を描いたその形。高い透明度から光を受けた時の輝きも強く、それを手にしたマスターの言葉は驚きと穏やかさで満ちていた。
「これ、高かったんじゃねえのか」「安くはなかったけど、これを見た瞬間マスターに絶対合うと思って」「そうか」……それでおしまい。それ以上の言葉はなく、使おうともしない。ただ彼はそれを手にしたまま手首を捻るようにして角度を変えて見つめており、一番たち勇者一行がやってくると「いらっしゃい」そう言って、このバーで一等良い席である棚に飾った。
※なお何時までたってもそこに置かれているので、桐生さんに「マスターが使ってくれないんです」と愚痴ったところ、「……ああ、俺もマスターの気持ちが分かる気がするな。少ない小遣いで買ってくれたもんってのは、それだけ大事にしたくなるものだからな」そう言って同調し、マスターもウンウンと頷くので、「今度から食べ物にしよう」とボソり呟いた。

難波
「へぇ……旅行に。それでこれが土産と……温泉饅頭なんてどこにでもあるもんだけどよ、結局こういうのが一番なんだよな」
てっきり意地の悪い事を言うかと思ったのに、なかなかの好評価だ。外側が茶色くて、中が黒の漉し餡で。どこにでもあるような、いたって普通の温泉饅頭。それでも彼は機嫌の良い様子で「ありがとな、大事に食わせてもらう」と礼を言い、側面にあるテープを破く指先もどこか慎重だ。
「別に破いちゃっていいのに」「馬鹿、勿体ねえんだよ。こういうのは、贈ってもらった身として大事に開けねえと」「そういうもん?」「そういうモンだ」
別にビリビリと破いたって、中身が変わるわけではないのにな。
それでも彼が大事にしてくれているのだと思うと心の内が暖かくなって、「じゃあ、ありがとう」と言うと「おう、もう返さねえからな」そう言って温泉饅頭を一つ開けると、一口目は大きく頬張って、頬を緩めた。


「まぁ確かに、青龍刀を扱うことはあるんだけど…………これはそもそも青龍がくっついてるだけで青龍刀じゃないんだよねぇ」
差し出されたお土産は、まさかの厨二病を擽る龍が絡みついた大剣のキーホルダーであった。いや、そもそも青龍刀ではないし、これなら春日君の方が喜びそうだし。いくら好きな子に貰ったものとはいえど、どこか白けた反応になってしまう。……が、どうやらこれはオマケと言うか揶揄うためのものであったらしい。
あとから差し出されたものは、その土地で有名な調味料の詰め合わせ。「趙さんって温泉饅頭食べてるイメージなくって……でも料理はお店を出すくらい上手だから、こういう方がいいかなって」「へぇー……確かにこういうのは好きだし、……うん……うん、いいね。どれも俺が使ったことのないものだ」「やった、じゃあ何か美味しい料理が出来たら、食べさせてくださいね」――ううん、どうやら彼女は驚くほど甘え上手らしい。こんなことを言われてはたらふく食わせてやりたくなる。
「じゃあ、早速うちに来る?」
これは料理人の性がそれともまた違うものなのか。俺はそれを見て見ぬふりして、軽い調子で誘うとその先にある笑みにまた心臓を掴まれてしまうのであった。

沢城(+荒川真澄)
一万円って書いてあるお札クッキーを渡した途端、頭を思い切り掴まれた。「オイ、これは何がいいてえんだ、ああ?」「いやだって沢城さんお金好きだから」「あぁ?」お土産をあげたのに……!なんて人だ!ピーピーキーキー騒いでいる間、荒川のオヤジさんは「丈、良かったじゃねえか」とのほほんとしているし、助けてくれないし。多分オヤジさんから見た私たちは仲睦まじいように見えているのだと思う。
後日、ゴミ箱にお菓子の包装が入っている事に気がついた。「あのクッキー、美味しかったですか」尋ねると、彼は一瞥も無く鼻をフンと鳴らした。「次は珈琲か酒にしろ。アレは甘すぎる」……うーん、素直じゃないなぁ。