「おいひーい………」
「おい動くんじゃねえよ」
なんやかんやで幼女になって半日。カクの腕のなかでたっぷりお昼寝をした後、遊びがてらに向かった先で焼き芋を貰った。ジャブラいわくお土産らしいのだが、お土産だなんて随分と珍しいことをするものだ。これもこの姿になったからだろうかと思うと、案外幼女も悪くないかもしれないと思うのだが、後ろから髪を引っ張られるのが少し気になる。
半分に分けた芋をぺろりと平らげた後、もう半分に手を伸ばすと「腹壊すぞ」という声がぴしゃりと手を叩く。
「だ、だってこれおみやげっていった…!」
「言ったけど、それでけぇだろ。腹壊しても知らねーぞ」
「ふーんだ、お腹壊さないもんねー」
「ケッ、そうかよ。あとでビービー泣いても知らねぇからな」
もくもくと焼き芋を食べる。お土産の焼き芋は、蜜の多いねっとり系というよりもホックリ系で、皮が多少渋いが、芋自体が甘いので気にせずに食べられる。そうして両手に収まらないほど大きな焼き芋をまるまる一つ食べた私はけふりと息を零す。流石に食べすぎたかもしれない。お腹はじんわりと暖かく、お腹もいっぱいで、後ろにいるジャブラに凭れかかると、背後から伸びた大きな手のひらが腹を撫でる。
「おま……腹ぽんぽこだぞ」
ジャブラは呆れたように零す。
レディの腹を触って、ぽんぽこりんなんて言わないでもらいたい。
「あ!せくはらだ!うったえてやる!!」
「なーーーにがセクハラだこのちんちくりん」
「ちっ、ちんちく…?!ちがうもん!ちんちくりんじゃないもん!」
むにむにと腹を掴む大きな手を叩く。けれどジャブラの手は予想以上に固く、いくら叩いてもビクともしない。つまりはされるがままで、暫く腹を揉まれる私は眉間に皺を寄せて、顔のパーツを中心に集めるようにしてウウウと唸ったが、ジャブラは「なんだ、やっぱ腹が痛くなったか」と零す。
違う。そうじゃない。なんでいつも私が唸ると腹を下したかと言ってくるのだ。女の子に言うことじゃないし、ノンデリカシーだ。そんなんだからギャサリンからフラれるんだ。そんなことを思いながらジトリと睨む。すると今度は片手で頬を掴まれてにゅうと潰されて、私の口は蛸みたいに飛び出てしまう。
「ぎゃははは!なんだその顔!」
「ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!じゃうあのせいれひょぉ!」
いくら唸っても、潰されたことで「ウ」の形で固定された顔では迫力がないらしい。ジャブラは暫くの間げらげらと笑っていた。
それから暫くして、ようやく飽きたらしいジャブラが手を離す。その頃には頬が痛くなっていて、私は両方のほっぺたを押さえたけれど、ジャブラがそれを見て悪びれる筈もない。特に気にした素振りも見せずに「そういや髪、結んどいたぞ」と言うので、私はそのままの恰好で首を傾げた。
「髪?」
すると、頭の後ろの方で何かが揺れたような気がして、恐る恐る後ろに手を伸ばすと、後ろの方で小さな球体がぽこぽこと伸びている。頭の動きに合わせてゆらゆらと揺れるそれは、たまねぎヘアーと言うにはしっかりとした球体で、先ほど感じた髪を引っ張られていたような感覚はこれが原因だったのかと、合点がいったような気がした。
「……ん…ふふ、ジャブラとおそろい?」
「恰好いいだろ」
「うん!」
ジャブラの眉間に皺が寄る。褒めたのになんで、と思ったが照れているらしい。
ひとまず体を捻って反転させ、ジャブラの方へと体を向けた私は、彼の頭にあるサングラスに向けて手を伸ばす。「んだよ」と愛想の無い言葉は返ってきたが、特に抵抗はされなかったので、バンドのついたそれを抜いてかわりに自分の頭に乗せてみる。
ただ、いまの私は頭が小さい。なんせ幼女だ。だから大人用のヘアバンドは大きすぎて、バンドで固定することは出来ずにずり落ちる。仕方がないので両手でサングラスを持って額に宛がい「みてみて、ジャブラのまね」と言うと、ジャブラはふはっと息を吐き出すように笑って「似合わねぇ」と私の鼻先を指の節で擦った。それからジャブラは暫く私を見つめたあと、小さな頭に合うようにゴムでヘアバンドの余り部分を縛って固定をしてくれたが、「やっぱ似合わねぇなぁ」と同じように笑った。