摩訶不思議な事象というのはごまんとあるらしい。つまりはそう、何が言いたいかというと、二月二十二日猫の日に、猫耳と猫の尻尾が生えたのだ。原因は分からない。というか分かる筈がない。ただ、このまま家を出るのも、部屋を出るのもまずいと思って部屋に籠っていたのだが、籠城も虚しく、一時間と立たずにカクに見つかってしまっていた。
「ほー………」
何故か、私を膝の上に座らせて見つめるカク。どんぐり眼で穴の開くほど見つめてくる様子に、じわじわと耳が熱くなるのを感じた私は「せ、せめて何か言ってよ……」と言いながら視線を逸らすと、頭の上にある猫耳をぺたんと伏せる。
しかし、それでもカクは何も言わなかった。いや、正確には、言葉は落とすのだが「ん、あぁ」とか気の抜けたような返事ばかりなのだ。
「~~~~っもう!変なのは分かってるから!」
「うん?」
「…だってカクなんにも言わないし…なのにずっと見るし……」
「……、あー……いや、……可愛いと思ってのう」
「へ?」
「なんじゃ、変なこと言ってしもうたか?」
「あ、え、いや、あの、……カクが可愛いっていうこと……あんまりないから……」
思わず動揺が走る。普段は私から要求しないと可愛いなんて言わない癖に、どうしてこうもサラリと恥ずかしげもなく言えるのか。
しかし、人とは単純な生き物だった。言葉の頻度が何にせよ、直球な誉め言葉を受けて嬉しくない筈もなく、胸がぽかぽかと暖かくなってゆく。赤くなる顔を隠すように胸元に身を寄せると、ラグドールのようなボリュームのある尻尾はゆらゆらと揺れて、ごろごろと喉が鳴る。その瞬間、しまったと喉を押さえるが、喉鳴りは止むことなくごろごろと言い続けて、カクは肩を揺らすように笑うと「愛らしいのう。いつも以上に感情がよく分かるわい」と言って腰に回した腕に力を込めた。
ごろごろと、ごろごろと。喉は鳴りやまずに、同じようにどきどきと胸が弾む。彼は知ってか知らでかにこにこと笑ったままでいたけれど、それがあんまりにも嬉しそうだったから、私は何も言えずにごろごろと喉を鳴らしながら、猫のように彼の肩口に頬を摺り寄せた。