見聞色の覇気

閃光弾を間近で受けたカクが、一時的に視力を失った。

全治までは二日ほど。目を休ませるという名目で瞳の上には包帯が巻かれているカクは、「わしとしたことが、閃光弾を受けるとはのう!」と声を荒げて怒っていたが、まぁ怒るだけの元気があるのだ。何よりではないか。

「まぁまぁ、今日は私に任せてよ!」
「……すまん、頼むぞ」

いくら慣れ親しんだ場所と言えど、このエニエスロビーをサポート無しで生活するのは無茶がある。幸いな事に、私は明日まで休みだ。であればとサポート役を買って出たのだが、肩に手を置いて助けを受けるカクはどこか新鮮で、あと目隠し包帯ってなんとなく、えっちな感じがする。ちらりと見上げたカクは、私が見上げていることに気付いていなかったので、視線が此方を向くことはなかったが、いつまで経っても動き出さないことに違和感を覚えたのか、少しの間を置いて此方を見下ろすと「どうした」と訊ねた。

「ううん、なんでもないよ」
「?そうか」

カクはとんでもなく強い。そりゃあルッチがいるから彼が生涯負けなしってことはないが、私は子供のころから勝てた試しはないし、暇さえあれば行っている組手だって三千回と行ったが全て私の負け。だからこうして彼が弱みを見せているというのは新鮮でしかないし、先のとおり、屈辱的であろうに弱みを見せた上で私を頼ってくれるのは気分が良い。

だから此処で見えないことを良い事に、背伸びをしてキスをしたのは機嫌が良いからとしか説明できないのだが、目隠し状態の彼は暫く間を空けた後「……覇気で見えとるし、考えも全て分かっとるからな」と呟いた。その瞬間、どうにも恥ずかしくなってしまったが、包帯で半分隠れた彼の耳も赤くなっていたので、お相子だと思いたい。