クリスマスに呼び出しを受けて

「黒岩さぁ……私のこと、24時間いつでも営業しているなんでも屋さん♡とでも思ってない?」

 黒岩はいつだってそうだ。こちらが寝ていようが、オフの日であろうが、関係なく、自分都合で連絡を寄越す。いや、寄越すだけだったら可愛いもので、連絡を無視しようものなら鬼のように着信を入れて来るし、この間なんてBARテンダーにまでやってきて「よぉ、人の連絡を無視しておきながらいいご身分だな。」と声を掛けてきた。

 あの時、情報を売ってもらう立場で無理強いするなんていいご身分じゃない。なんて、出かけた言葉を飲み込んだのは大正解だったと思うが、何もクリスマスに呼び出さなくたって!

「なんだ違うのか?」
「違います。連絡OKなのは平日十時から夜は二十時までなんで以後よろしく」
「覚えていたらな」

 クリスマスだからか普段よりも浮足立った歌舞伎町。煌びやかな表通りを避けるように、光の届かない路地裏に入った私は、黒岩が差し出す携帯を受け取りながらそれを見る。ディスプレイには過去に数度ほど情報を売った客が映っており、――おそらくはこの客の身に何かあったのだろう。それこそ、この組織犯罪対策課の刑事が動く程度には。

「……コイツに身に覚えは」

黒岩が私の反応を窺いながら問いかける。まるで事情聴取のような問いかけだ。当然、情報屋の私が面白いと思える筈もなく、「情報屋からタダで情報を貰おうって?」と問いかけたものの、黒岩は「見逃してやっているという立場を忘れているようだな」と鼻で笑った。

「………黒岩のそういうとこ、ほんっっっと嫌い。」

 警察の癖に、警察という立場を最大限に利用をする男。まさに商売あがったりだ。せめてもの抵抗として携帯を返す際に心底嫌そうな顔を見せたつもりだったのだが、黒岩は私を一瞥したあとふっと息を漏らすように笑うだけで、「行くぞ」と言うと此方の返答を待たずに踵を返した。

 黒岩のことだ。恐らく行先はいつものBARテンダーあたりだろう。…多分。取り合えず取調室ではないと思いたい。脅しを前に拒否権を与えられなかった私は彼の後ろをついて歩きながら「ねぇどこ行くの?テンダー…よね」と問いかけると、黒岩は足を止めては「なんだ、ホテルがいいのか?」と白々しく言葉を返した。


 ああ、本当に性格が悪い男だ!