真面目な彼

 整った顔立ちでモテまくっている志摩と、お調子者の山田。その二人と行動を共にする迎井は、それなりに真面目な性格をしていたと思う。制服は一番上までボタンを閉じているし、カラオケで勉強会をすれば一曲だけと歌おうとする山田をみつみちゃんと一緒に止めていたし。だから、そんな真面目な彼が誰かを好きになったとき、きっと誠実に愛してくれるのだろうなとラブコメ脳の私は考えていたのだが……随分と迎井を見ていたらしい。気付けば、忘れ物を取りに来た迎井から問いかけられていた。

「なぁ、最近よく俺を見てんのってなんで?」
「え?」
「いや、見てないってことはないだろ?なんかやたらと目が合うし、……何か悪い事でもしたのかと思ったんだけど」

 訊ねた割に、気まずそうな声色。好意があると捉えずに、自分に非があると考えるのも彼の真面目さを表しているようで、つい息を漏らすように笑いが落ちる。それを迎井は意味が分からんという顔をしていたが、非がある事を考えても尋ねるその誠実さが、想像通りだと笑えてしまったのだ。

「ごめんね、なんでもないの」
「なんでもないってことはないだろ」
「え?……うーん、ただ、迎井が好きになる子が羨ましいな~と思って」
「はぁ?」

 迎井はきっと、逆立ちをやったって私が何を考えて思っているかは分からない。それこそ、気があるのだろうかとか考えたりするのだろうか。でも、考えてみたら私もなんで迎井のことを考え始めたのかそのきっかけが思い出せず、訳を聞いて良いものか狼狽える様子を見て、適当にへらへらと笑いながら「迎井って、恋人を大事にしてくれそうだなって」と理由を話すと、迎井は気恥ずかしそうに視線を落としたあと、静かに呟いた。

「……何がどうして俺を相手にそう思ったのかは知らんけど、……ただ、恋人なんてたった一人の狭き門だろ?他とは違う感情をおれだけに向けてくれてるのなら、大切にしたいとは思うよ」

 夕暮れ時、差し込む茜色の夕陽が彼の顔を赤く染める。
 でも、それだけじゃなくて彼の選んだ言葉ひとつひとつが持っていた疑問の答えをパチンパチンと埋めていくようで、そのすべてが埋まった時、心の底から羨ましいと思えた。

「……、……」
「いや、……なんか言ってくれよ」
「だって、女の子苦手そうなわりに凄い良いこと言うから」
「う、ぐっ……まさか、江頭に聞いたのか?」
「え?そういうわけじゃないよ、ただ女の子とあんまり関わろうとしてないし、あとは山田が直帰マンって言ってたし。…………ねぇ、迎井って、女の子が駄目ってわけじゃないよね?」
「……まぁ」

 気恥ずかしそうに視線を逸らす迎井。それに構わず「じゃあ、私にもチャンスがあるってことかな」と尋ねたのは、羨ましさからの勢いだったかもしれない。けれど、その答えを聞いてしまうと即お断りをされそうで、「あ、でも答えは言わないで!結構ガチだから速攻無いって言われるのも辛いの!」と答えを嫌がって鞄を手に教室を出ようとすると、迎井の手が腕を掴んで引き留めて尋ねた。

「……それ、期待していいのか」