真島
「××チャン~、待っとったで~♡なんや高校生にもなると随分と遅いんやのぉ」
どこからどう見ても極道の男が、普通に校門前で待っているものだから、先生たちが顔面蒼白で対応に当たっていた。その様子はちょっとした騒ぎになっており、校舎側からこっそり携帯を向ける人もチラホラ。「な、なんで真島さんが……」絶対に巻き込まれたくない。彼に巻き込まれてみろ、このあとの生活は腫物のように扱われるにきまっている。それなのに彼は平然とこちらに声をかけるし、ヘラヘラ笑いながら手を振るし。ご丁寧にも彼がしっかりと名前を言った事で全員の目が「もしかして関係者?」と疑いを向けてくるものの……これはこのあいだ街中で「パパ!」と悪戯に腕を絡めたことへの仕返しか。
「もう!真島さん、ぜったい学校に来ないでって言ったじゃない!」
彼の手を引いて引っ張りながら歩いているのに、真島吾朗は笑うだけだった。「なんや、お前の見とった漫画にはああいうシーンがあったで。しかしまぁ……折角来てやったのに冷たいの~」明日にはヤクザの娘とかヤクザの恋人とか噂が広まっているに違いない。それを分かっているくせにタチの悪い彼は笑うばかりで、「孤立したら吾朗さんのせいですからね」と言うと、彼はカラカラと軽い調子で笑い「上等や、責任でもなんでもこの真島吾朗がとったるで」と無責任にいった。
冴島
学校から響くチャイムが遠くなり、友人と別れて暫く。歩いていると大通りから続く小道に冴島さんが立っていた。「うわっ!びっくりした、冴島さんなにやってんの?!」あんまりにも大きいから熊かとおもった。いや、都会の街中に熊なんているわけないんだけど。「……おお、俺が学校に行ったら先生方だけじゃなく生徒もビビらせてまうやろ」「これはこれで結構ビビったけど……」その言葉に、僅かに目元を緩めて笑いを一つ、二つと零す冴島。
「もー、携帯に連絡してくれたらいいのに」
溜息混じりに呟くと彼はそれを適当になだめるように頭をポンと撫で「まあ、ここで会えたんや。もうええやろ。……それよりも、きょうの晩飯は焼肉に行くで」と言って、先を歩き出した。
難波
「……オイッ、……××、……××っ!」
学校から少しだけ離れたところにある、電柱の裏からコソコソと話しかける難波。電柱の裏はそれなりに陰にはなっているものの、コソコソ隠れている姿は不審者そのものだ。「難波さん……何してんの?」「いや、俺みてえなホームレスがよ迎えに行くわけにもいかねえだろ?だからなるべく見つからないようにだな……」「携帯で連絡すればいいのでは……」「あ」……まぁまぁ何はともあれ、警察にご厄介にならずに済んだし、無事に合流する事も出来た。それに、恰好がなんであれ、お迎えに来てくれたという事実が嬉しくて仕方が無い。
「それで、お迎えなんて珍しいね。どうしたの?」
尋ねると、「この後に、趙のところで飯を食おうって話になって誘いにきたんだよ」「ああ、そういうこと。じゃあ私も行こうかな」「よし!」「……なんかやけに喜ぶね?」「趙のやつ、学生のお前がいると張り切って飯の量を増やすからよ。見ろよ、きょうはタッパーまで持ってきたんだぜ」「……難波さん、そういう時はお前と一緒だからだよっていうんだよ」前に一番くんに向けて足立さんと一緒にデートが何たるか仕込んでいたけど、彼は本当に女慣れしているのだろうか。
少しだけ気まずそうな、それでいて気恥ずかしそうにする難波に向けて笑うと、彼はへの字に口を噤み「いいから、とっとと行くぞ」とひとり歩き出してしまった。