夏祭り


カランコロンと下駄歯が響く、夏祭り。いくら好きな人と二人きりで夏祭りに行く事になったとはいえ、付き合ってもいないのに着物を着たのは気合が入りすぎているだろうか――。慣れないお団子にまとめた髪の毛に、揺れる髪飾り。待ち合わせの場所は人も多く、待ち人の姿も見えない。
「天佑さん、まだかな……」
それどころか「お姉さん一人?良かったら一緒に行こうよ」なんて声を掛けられて、さぁどう断ろうかと考えたその時。「残念、この子は俺と遊ぶんだから無理だよ」と笑い混じりな声が割り込んできた。視線を上げると普段着ている派手な柄シャツを落とし込んだ浴衣姿の待ち人が。
「ごめんねぇ、柄にもなく浴衣を着てたら遅れちゃったよ。でも、浴衣でデートっていうのもいいでしょ」××ちゃんが浴衣を着てくるって期待してたんだけど大当たりだったよ。そう言って穏やかに笑む瞳に、少し早めの花火が上がって花開く。その間にも、「なんだよ、男いんのかよ」という男はいなくなり、もう“夏祭りのデート”は始められるのに――ああ、やっぱり好きだな。サングラスに映る花火に見惚れるようなふりをして見つめると、彼は手を取って「ほら、今日は楽しもうよ。折角の二人きりなんだし」そう指を絡めながら言った。

トミザワ
「日本の祭りって凄いんだな。ハワイも毎日が祭りみたいに人が多いし、賑やかだって思ったけど……夏祭りっていう行事ごとだからか、町全体が独特な雰囲気を持つというか」
それにアレだけ人が多いのにどうしてあんなに騒ぎが無いんだ?日本語に親しみを持つトミザワからしても、実際に見た日本の夏祭りは驚くものがあるらしい。
折角だからと言ってやってもらった屋台体験。金魚すくいに、ヨーヨー風船、射的、それからお面屋台まで。終わってみれば、なんとも祭りを楽しんでいる人の恰好になってしまったが、これこそが夏祭りの醍醐味だ。
「少し休憩でもしようか」焼きそばやたこ焼きを買って、花火待ちの人でにぎわう河川敷の一角に座る。「なぁ、なんであそこの人キューカンバーなんか食ってんだ?」「きゅーかんばー?……ああ、あれはキュウリの一本漬けだよ。ピクルスみたいなやつ」「祭りじゃピクルス食うのか……」他愛のない話も、新しい場所のなかでは新鮮みを感じる。彼は途中で買った缶ビールを開けながらも、花火が打ちあがると飲むのも忘れてその花火を見続けていた。「どう、日本の夏祭りも負けてないでしょ」「……そうだな。人が多いし、屋台だって毎回並ばなきゃいけないけど……なんというか好きな奴と行きたくなるって気持ちが、よくわかった」「えっ」「あっ」ああ、いや、その。濁りに濁ったその言葉。花火が照らしたその顔は赤く、その続きの言葉を求めたが、彼は少し気恥ずかしそうな顔で「いいから、お前も花火見ろって。終わっちまうぞ」と花火を指した。