ねぇ、お弁当つくって!(🥖👘)

🥖

「お、じゃあどんな弁当がいい?」

 〇〇のお願い事を聞き入れない日はない。いつだって〇〇に甘い彼は地面に膝をついて屈み、小さな〇〇としっかりと目を合わせてリクエストを聞いてくれるが、頼まれたお弁当はよりにもよってキャラ弁で。いくら料理上手といっても四十も過ぎた男だ。流石にキャラ弁については疎いが、先のとおり〇〇のお願い事を聞き入れない日はないし、要望を聞いた手前聞き入れないわけにもいかない。

 サッチは目をきらきらと輝かせながら「こういうものがいい」「ああいうものがいい」と饒舌に語る〇〇の頭を撫でてやると「おれっちに任せとけ」と白い歯を見せて笑った。

 その後の彼は、まずキャラ弁はなんたるかを調査。それから〇〇が指定したキャラクターを図面に起こして、それぞれ何の材料をどこに使うかなどもきっちりと計算して準備をする。

 そうして翌朝、〇〇がいつもより早起きをしてキッチンへと向かうと「お、早いなぁ」と笑うサッチの姿があり「お弁当は?」と訊ねてくれると、少しばかりフフンと誇らしげに笑うサッチがお弁当箱を見せてくれる。そこには要望通り〇〇が好きなキャラクターのキャラ弁が。嬉しさのあまりに目を輝かせる〇〇がその場でどたどたと足踏みをしたあと、「サッチありがとう!」と抱き着くと、彼は心の底から嬉しそうに「どういたしまして」と笑って背中を優しくぽんぽんと叩いてくれたとか。

※なおそれ以降もキャラ弁を強請られるようになるため、普通にキャラ弁作りのスキルが上がるサッチ。それにより、他メンバーの弁当もキャラ弁になったりもして、時々エースやハルタあたりから「恥ずかしいからやめてくれ!」と言われたりする。思春期で可愛いね。

👘
「お嬢が構わないなら別におれはいいんだが……サッチじゃなくてもいいのか?」

 思わず首を傾げるイゾウ。一体なぜ台所を預かるサッチではなく、自分なのだろう。しかし自身にも兄弟がいるせいか〇〇にはどうにも甘くなってしまう。ましてや「イゾウに作ってもらいたいの!」なんて言われた日には断ることも出来る筈もなく、イゾウは了承。

 早朝四時頃、まだ船自体も寝静まったような頃合い。ひとり弁当作りに勤しむイゾウを見て、朝食分の仕込みを行うサッチは「おれっちが手伝おうか」と尋ねるが、イゾウは「いいや、おれが指名されたんだ。おれが作るよ」と穏やかに笑う。
 その様子に「妬けるねぇ」と呟いた言葉はあながち嘘ではないかもしれないが、静かな空間に響くコトコトという煮込む音に、ふんわりと香る甘い匂いを前にしていれば誰だって穏やかになるものだ。「いい匂いだなぁ」「あぁ、そうだろう」「きっと喜ぶぜ」「……だといいが」二人の会話は穏やかに続いた。

 そうして出来上がったのは小さい子も大好きなおいなりさんと、ふんわり甘い卵焼き。特別料理が得意というわけではないが、これだけは覚えている母国の料理。それを美味しいと言って貰えたら、きっと幸せなことなのだろうな。とまだ渡してもいないのに、笑う〇〇のことを思ってはくすりと笑いながら小さな弁当箱に詰めていったとか。