ゴールデンウィークの中頃。帰省した実家からの帰り道に、なにか美味しいものでも買って帰ろうかと寄ったコンビニで、見知った顔を見かけた。普段と恰好が違うので分かりにくいが、多分ナベさんだと思う。柄のないシャツに、膝小僧が見えるハーフパンツ。なんともシンプルなコーディネートだが、寝ぐせがあるあたりは家が近いのだろう。
××は暫く声を掛けずに服装を見て刑事よろしく推理をしてみたが、もしかしたら熱視線すぎたのかもしれない。途中で目が合ってしまった。
「……凄え見てくる奴がいると思ったら、なんだよお前か」
「こんばんは、こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ」
「そりゃあこっちの台詞だろ、大荷物だがこれから時期をずらした帰省か?」
「いえ、丁度帰ったきたところです。それで帰ってもご飯を作る気力がないので何か買って帰ろうかと」
「へぇ」
そりゃお疲れさん。軽い労いの言葉に思わず目尻が下がる。ここで何か気の利いたお土産でも渡せればよかったが、特にお土産なんて買ってこなかったので帰省ネタは早々に取りやめて、方向転換がてらに尋ねる。
「ナベさんも買い出しですか」
「お、よく分かったな」
いやぁ、ナベさんが自炊しているイメージがなくって。――とは当然言える筈もなく、「サンダルで軽装、あとは寝ぐせがついてるので」と適当にそれらしい言葉を並べると、彼は機嫌よく笑って「名推理だな」と零したあと、総菜が並ぶ棚から手をおろして尋ねた。
「なぁ、ここに飯を買いに来たってことは、このあと暇なんだよな」
「え?あぁ、えぇ、そうですね」
「じゃあ、一緒に飯でも行こうぜ。どうせ暇なゴールデンウィークだ、少しは充実させないとな」
「あはは、いいですよ。じゃあ、どこにいきます?」
「そうだな……このあたりで行きつけのラーメン屋があるから、そこはどうだ?」
言いながら、自然と二人並んで店を出る。ガラガラと引くキャリーは相変わらず重くて、ゴロゴロガラガラと煩いけれど、不思議とその音は気にならず、ナベさんの話だけがよく耳に届いた。