私が、人の皮を被った竜であることを見透かされているのか。
それとも、この爬虫類のような縦長の瞳孔が気持ち悪いのか。
昔から犬猫といった動物たちからは軒並み嫌われていて、あの法の番犬部隊からもよく唸られていた。だからなのか、私はとくにもふもふのものが大好きで、ジャブラが能力者になったその日から、トリミングは私の役目だった。
「あぁー………ジャブラ…最高……………」
もっふもふの、まっふまふに仕上がったジャブラ体を倒しながら零す。腕を回せばずぬぬと毛に沈むほどのまふまふ感といったら最高で、顔を埋めてスウと犬吸いをすれば、トリートメントの匂いに包まれていく。
「これだからトリミング係はやめれないんだよねぇ……」
そんなことを呟く私を見て、ジャブラは笑う。「おめーも飽きねーなぁ」そんなことを言いたげな視線が向けられたが、こういったやりとりもトリミング後の恒例行事のお約束。ジャブラは、特に嫌がる素振りも見せずにくああ、と白い牙が目立つ大きな口を開いて欠伸をしていた。
まぁ、そんな和やかなひと時を過ごすなか、ただ一人だけ、カクだけは、「な……っぁ………?!」と矢鱈とショックを受けたような反応を見せていたが。
「な、何をしとるんじゃアネッタ!!」
「何って、もふもふ中だが?」
「そりゃあ見れば分かる!抱き着くならわしでいいじゃろうが!」
「…………だってキリンって……ふかふかじゃないから………」
「がびーん!!!!!」
そう。キリンは可愛いし、大好きなのだけれど、一つ欠点があるとすればキリンはふわふわではないのだ。惜しい。ふわふわのキリンだったらもう、言う事なしで最高だったのに。そんなわけでカクではなく、もふまふのジャブラに抱き着いているのだが、私とカクのやりとりを見たジャブラは尻尾を振ってにやにやと笑う。
「ぎゃはは!悪いなァ、カク。アネッタはおれにお熱のようだぜ」
「な…ッ!アネッタ!!!」
「う、うるさ…!」
しかし、このジャブラの煽る言葉が悪かった。カクはジャブラに対抗するつもりなのか、その場でずるりと首を伸ばしてキリンの姿になると、長くてしなやかな、鞭のように硬い尻尾を私の腹に巻き付ける。
「わ、ちょ…っ!」
「アネッタ!ジャブラから離れんか!」
「いや!私はもふもふがいいの!!」
「も…っ…ふもふはないが、わしだって可愛いじゃろうが!!」
「可愛いけど、今はもふもふの気分なの!!」
誰だって、好きな食べ物があっても、なんか無性にカレーが食べたいなとか、パンが食べたいなとかそれ以外のものを好む時だってあるじゃないか。それと同じで、今はもふもふがいい。それはとても単純明快な答えだ。なのに、このやきもち妬きといったらそれも許してくれずに、尻尾でぎちりと腹を締めつけて早く離れろと訴える。
自制が効かないのか、それともちょっとした脅しなのかは分からないが、腹に巻き付けられた尻尾は肉に食い込んで、骨がミシリと悲鳴を上げる。名残惜しいが、早く離さないと骨を折られてしまいそうだ。わが身可愛さにジャブラから手を離すと、カクは私の体を持ち上げて満足そうに息を落として「可愛がるのはわしだけにしとけ」と言いながらごつごつの頭を摺り寄せた。
この話はこれで御終い。ただ、その後のカクといえば、矢鱈ともふもふの毛布だとか、まふまふのパジャマだとか。もふもふ不足対策として色々なものをプレゼントしてくれたのだが、やきもち妬きのその必死さが可愛いなと思ったのは、墓に入るまで内緒にしておこうと思う。