待ち時間

 任務を終えるのを待つ間、こうしてカフェで時間を潰す事は少なくない。ただ、その相手が常日頃任務に出ているようなロブルッチなのは少々珍しいような。その物珍しさから彼を見ながらコーヒーカップを手に取り、熱さを感じながら口に含むと、瞬く間に強い苦味が舌の上に広がった。

「に゛ッ」

 全身の毛が逆立つような感覚を覚えるほどの苦味に肩が揺らぎ、マグカップを置く。とぷんと波打つ珈琲は底なんか見えないほど真っ黒で、先程の苦味のことを思うとどうにも食指が動かない。そういえば、カクやブルーノは無糖珈琲が良いと言っていたが、彼らの味覚はどうなっているんだろう。私はまだ、ジャブラと同じようにミルクも砂糖もたっぷり入れたいけどな。
 言い訳がましくそんなことを考えると、画面外から伸びた手がコーヒーカップを攫う。「あっ」と言いながら、攫われていった方向を見ると、向かいに座るルッチが目の前で攫ったマグカップを手に、ゆっくりと口に運んだ。カップからこぼれる湯気が、ルッチの表情を包み込んでいたが、彼は無駄に外面が良いせいか、外から差し込む光も相まって妙に絵になっていた。まさかこれが私から掻っ攫った珈琲だとは誰も思うまい。

「美味しい?」

 ルッチは返事をしなかった。けれど、一口二口とゆっくりと珈琲を飲むあたり、それが答えなのだろう。全く素直じゃないんだから。私はメニューを手に取るとルッチに向けて「何か頼んでいい?」と問いかける。相変わらずルッチからの返答は無かったけれど、やってきた店員さんに向けて「すみません、珈琲を一つ。…あ、ミルクと砂糖はたっぷりで」と注文した私は、窓の奥に広がる青空を見て「いい天気だねぇ」と笑うのだった。