彼女は酔っぱらい

春日
「なぁ……これ俺には酷すぎねぇか……」
膝上に跨って、ニコニコヘラヘラ笑いながら顎髭にちゅ♡ちゅ♡とキスをする××。これじゃあ生殺しじゃねえかと呻く一番に、難波は「堪えろよ~一番。公衆の面前だ」と呆れて同情するものの「一番、此処で手ェ出したら逮捕だからな」と笑い混じりに言う足立の目は本気(マジ)だったように思う。「分かってるっつうの!××ちゃんに手は出さねえよ」春日は誠実にそう零すばかりであったが、その様子に「少なくとも此処では、ね」と意味深なナレーションをつけ足す趙に、「趙!お前なぁ!」と声を荒げた。

マスター
「××、もうやめておけ」
彼女に出したグラスに手のひらを被せて、自分の方へと引き寄せる。「えぇ、なんでですかぁ」酔っぱらった彼女の声は普段よりも甘ったるく、表情も緩い。マスターはグラスをひょいと持ち、ひんやりとしたグラスの面を彼女の額をあてると「酒を楽しむのは勝手だが、何事にも限度があるってもんだ」そう言って「さ、いい子は水でも飲むんだな」と言いながら、代わりの水を差しだした。


「××ちゃんは酒が弱かったかぁ……」
普段が大人しい分、語尾にハートマークなんかつけちゃって「天佑くん♡」なんて甘ったるく言って身を寄せる彼女が可愛いやら、憎たらしいやら。タチの悪い酔い方に、これまでの飲み会でも同じような状況だったのだろうかと下っ腹が重くなるのを感じて、「××ちゃん」そう呼びかける声は普段よりも低かったように思う。それでも、その空気すら読めずに顔を上げる彼女に、顎を掬って口付けて、そのまま開いた口に舌を差し込んだのは――ちょっとした八つ当たり。しかし、そのまま遊ぶ事も無く“それ”を終えると彼女はポカンとしているので「酔う時の相手は、選ばないとねぇ」そう言って、濡れた彼女の唇を親指の腹で拭った。

足立
「××ちゃんと酒を飲めるのは嬉しいが、こいつはちょっと考えものかもしれねぇなぁ」
もう少し若ければ、流れに乗じてお持ち帰りをしていたのだろうか。……いいや、いつの時代だって、好きな相手ほどそういうことはしなかったはずだ。「足立さ~ん♡」甘えて身を寄せる彼女を見て、手の甲で彼女の頬を撫でる。「××ちゃん、流石に飲みすぎじゃあねえか」酔いで火照った頬に、蕩けた瞳。据え膳食わぬは男の恥とはよく言ったものだが――「男は狼だから気をつけなさいたァ……よく言ったもんだぜ」そう言って手を離し「マスター、水を一杯貰えるか」と頼んで、差し出されたグラスに手を伸ばした。